【中川大輔】舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』【インタビュー&グラビア】

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ニッポン放送と劇団・ヨーロッパ企画主宰の劇作家・演出家・脚本家、上田 誠のタッグによるニッポン放送開局70周年記念公演『鴨川ホルモー、ワンスモア』が東京・サンシャイン劇場にて上演中だ(2024年4月29日(月・祝)まで。大阪公演はサンケイホールブリーゼにて5月3日(金・祝)、5月4日(土・祝)上演)。
謎の競技「ホルモー」を巡る京都大学の学生たちによる青春群像コメディ劇で主人公の新入生・安倍を演じるのは、『MEN’S NON-NO』専属モデルとして活躍する一方、俳優としても数々のドラマや映画に出演を重ねる中川大輔。

「Sparkle web」では今作で舞台初主演を務める中川にインタビュー。
かねてよりヨーロッパ企画作品への出演を熱望していた中川が本作に懸ける想い、コメディ作品に対するスタンスなど、穏やかな口調の端々に本公演への熱量が感じられる取材となった。

なかがわ・だいすけ
1998年1月5日生まれ、東京都出身。『MEN’S NON-NO』専属モデルとしても活躍中。最近の主な出演作に、ドラマ「彼女と彼氏の明るい未来」(西野洋平 役)、ドラマ「パティスリーMON」(土屋幸平 役)、ドラマ「コタツがない家」(徳丸康彦 役)、ドラマ「くすぶり女とすん止め女」(本間隼斗 役)など。Instagram

interview

舞台初主演おめでとうございます。決まった際のお気持ちはいかがでしたか?

中川:主演というものにずっと憧れていたので、嬉しかったですね。スピンオフ的な映画でやらせていただいたことはあるんですけど、やっぱりいつかはガッツリ主演を張りたいなという思いがあったので、今作を全うして、そこからまたもう一回、もう一回と主役が張れるようになりたいなという気持ちです。

中川さんは以前から、本作の脚本・演出を務める上田 誠さんの劇団・ヨーロッパ企画の作品にずっと出演したかったとおっしゃっていました。

中川『MEN’S NON-NO』モデル同期の鈴木 仁が以前のヨーロッパ企画作品(舞台『たぶんこれ銀河鉄道の夜』 〜The Night of the Milky Way Train(right?)〜・2023年)に出ていたんですが、とても面白くて! 話としても面白いし、かつ笑えるし、今まで見たことのない仁を見ることができて、「僕もいつかこういう舞台に出てみたいな」と思っていたんです。
その後、仁とラジオで話す機会があったんですが、「僕も出たいです! 上田さんよろしくお願いします!」みたいなことを言ったんです。そしたら、後々聞いた話なんですが、上田さんがそれを聞いていてくれたみたいで。そのラジオから半年後くらいに今回の舞台の話を聞いたので、言霊じゃないですけど、自分の願望を言葉にすることの大切さを実感した出来事でした。

「やりたいことは口に出した方がいい」と言いますよね。

中川それって本当なんだなって思いました。待望していたものがこんなに早いタイミングで、しかも主演という形で叶ったことは本当に嬉しいですし、すごく運がいいことだと思うので、ちゃんといい舞台にして成功させたいなという思いです。

上田さんの演出の魅力はどのようなところにあると思いますか?

中川僕ら役者と同じ目線で話してくれるところです。上田さん自身もプレイヤーですし、ラジオやバラエティ、大喜利番組とかにも出られる方なので。演出家と俳優という関係性ではあるんですけど、僕らプレイヤー側の気持ちもすごく分かってくれているように感じます。
今作の取材会などでお話しさせていただいた段階から、上田さんと僕は同じ人間というか、似たところがあるような気がしていて。僕は飛び抜けて社交性が高いわけでもないし、オタクな部分もあるんですけど、上田さんも勝手ながらそういうところがあるのかな?って、いいコミュニケーションが取れそうだなって思っていました。
お笑いが大好きなところも一緒で、そういう意味では今回の舞台で目指したいコメディの姿みたいなものは、最初から分かり合えていたような気がします。意識して笑いを取りにいくわけではなくて、僕らが真剣に役になりきって100%演じ切った結果、笑いが生まれるようなものにしたいと。やり切った結果がお笑いになっていたらいいなというスタンスでやりたい、といったことを話したら、上田さんも「本当にそうだと思います」ということをおっしゃっていたので、もう全力で演じるしかないなと思っています。

中川さんはこれまでも舞台公演には出演されてきましたが、舞台の面白さ、難しさなどはどう感じていますか?

中川:面白さで言うと、舞台ならではの高揚感ですね。前回出た舞台(DisGOONie Presents Vol.10 舞台「MOTHERLAND」・2021年)でも、会場のキャパシティが大きくてたくさんのお客さんが観ている中、舞台袖から飛び出していく時の高揚感は、やっぱりドラマの静かな雰囲気の「用意、スタート」で始まるものとは違うなと思いましたし、そんな公演を毎日やっているわけだから、舞台公演中って基本テンションが高いんですよ。ずっと高揚している感じがあって、そこが楽しいです。
前回の舞台では、稽古の時に難しさを感じていました。自分の好きなお芝居はできるだけナチュラルなものなんですけど、舞台という表現だと目の前のお客さんに届けなきゃいけないので、〝伝えるお芝居〟にしなきゃいけない瞬間がある。今までそんなに舞台の経験が無い分、そこが難しかったですね。ドラマだと今のこのテンションで話していてもマイクやカメラなどが切り取ってくれますけど、舞台ではそれだと伝わらないものがあると思うので。

DisGOONieという、脚本家・劇作家・演出家の西田大輔さんによる演劇プロジェクトに参加されたわけですが、かなりの刺激があったのではないでしょうか?

中川:そうですね。西田さんプラス周りの役者の皆さんから成る「西田組」みたいなものがあって、だからこそ阿吽の呼吸で、すごいスピード感で大作を作り上げられる現場なんだな、というのは見てて強く感じました。
現場で作っていくという話だと、ヨーロッパ企画さんもそうなんですよね。今回も客演に近いというか、劇団員さんたちの中に入る形なので、皆さんに負けないように、主役としての存在感を発揮していけるように意気込んでいます。

主役ということで、本作では座長という立場にありますが、稽古場ではどのような役割を担っていますか?

中川やっぱり上田さんが劇団を引っ張る立場なので、僕は引っ張っていく役割じゃないような気がしています。僕はいつもと変わらずにニコニコと、現場でいい空気感を作れたらいいなと。そこが僕の得意な分野でもあると思いますし、自分の強みを活かしていけたらと思っています。稽古期間中は皆さんとの一体感を作っていくのも舞台の成功に大きく関わってくるところだと思っていて。以前、誰かから聞いた話なんですけど、劇団って団員の皆さんが同じ空気感を持っているから、面白い舞台を作ることができる。ヨーロッパ企画さんの本公演がめちゃくちゃ面白いのも、25年間ずっと一緒にやってこられた空気感があって、それがそのまま舞台上に出ているから面白いんだと思うんです。今回は1カ月ぐらいの稽古期間にはなりますけど、そんな空気感を一緒に作り上げることができたらいいなって思っています。

今作は京都大学の学生たちが織りなす青春群像劇です。中川さんが演じる安倍というキャラクターについて、どのように捉えていますか?

中川安倍はちょっとイタいところがあるんですが、僕も自分自身「イタいな」って思うところがあるので(笑)、共感できますね。イタい自分を客観視できちゃう部分があるというか。突発的にイタい行動をしちゃうんですけど、後から「あんなこと言わなきゃよかった」とか「なんであんなことしたんだろう」みたいなことをぐちぐち考えてしまう(笑)。安倍の場合はそれに打ち勝つので、見ていて気持ちいいんですけどね。

中川さんも大学に通ってらっしゃいましたが、その経験を今作に活かせそうなところはありますか?

中川:僕が通っていたのは美術大学だったので一般の大学、それこそ京大とは違うかなと思っていたんですけど、京大と美大ってすごく似てるというか、偏見かもしれないですけど変な人が多い気がします(笑)。卒業式に変装したりコスプレしたりしていくのって京大か美大ぐらいじゃないですか? その共通項って何なんだろうなって考えたら、美大も京大も、クラスの中に一人いる〝ちょっと変わった人間〟が行くところなのかなって(笑)。頭脳面ですごく飛び抜けていた人は京大に行って、絵とかアート方面の人は美大に行く。クラスの変わり者たちが行くという意味では似ているところがあるのかなと思っていて、美大のあの自由な雰囲気を想像すれば、京大にも結びつくのかなって思っています。

美大に通っていた頃のことを振り返ると?

中川:とにかく大学時代は自由でしたね。クラスのみんなが色々な創作活動をしているので、「自分も何か作らなきゃ、個展とかやらなきゃ」といった焦りが自然発生的に生まれる場所でした。取り憑かれたように表現しているような奴らがいたのですごくいい刺激を受けましたね。

いつ頃から美大への進学を考えていたのですか?

中川高校3年ぐらいの時です。絵が好きだったので、絵で受験できるというところにまず惹かれて。一般大学の学部には学びたいと思えるものが無かったので、興味のある絵の方面に進学しようと思い、それから美大の予備校に通っていました。

今作は「ホルモーなる謎めいた競技をめぐる、京都の大学生たちの青春群像劇でありリグレット劇」とのことですが、中川さんは大学時代にリグレット=後悔していることはありますか?

中川:いっぱいありますね。僕は作品に対してが多いんですけど、大学時代だと締切の都合で全く自分が納得できていない作品を提出しなきゃいけない時もありました。その作品が同じ学部の学生80人くらいの前で、講評でボロクソに言われたりして。僕が勝手に感じただけかもしれないですけど、「かっこ悪いな」って思われたんだろうな、とか考えてしまって。今でも思い出すだけで悔しい出来事です。
役者になってからも出演ドラマの完パケを観て、自分の演技に「なんだこいつ」って思う時もありますし……そういう後悔はたくさんある方なので、今回の劇には向いていると思います。後悔を乗り越えていく、という作品なので。

俳優の皆さんの中には「自分の出ている映像作品の放送はなかなか見られない」という方もいらっしゃいますが、中川さんは観られますか?

中川:戒めとして観てますね。苦行というか(笑)、修行的な意味で観ることが多いです。楽しんで観れることはそんなに無いので一回、腹に力を入れて「観るか」と臨むような行為ですね。

そこでの後悔や反省を次に活かすための行為。

中川:そうですね、後悔や反省があるからこそ成長すると思うので。「後悔を乗り越える」というのはこの劇のテーマでもありますし、僕自身のテーマでもあるので、その辺りは共感しながら作品に携わっていけそうだなって思います。

中川さんはモデルとしてもご活躍されていますが、モデルをやっているからこそ俳優業に活かせたことなどはありますか?

中川:モデルとしてカメラで撮られていた経験があるから、映像の俳優としてカメラ前に立った時もそこまで自意識過剰になることなく立てていた気がします。映像のカメラで撮られることに慣れるのに、そこまで時間がかからなかったと思います。
逆に俳優活動からモデルのお仕事に活かせたこともあって、〝表現の幅〟という点でモデルでは超えられなかった壁はあったかなと思っています。モデルは服をかっこよく見せるというお仕事なので、「もっと自由に動いて」「もっと大きく動いて」と言われるとどうしていいか分からなかったし、ちょっと恥ずかしかったんですよ(笑)。でも俳優活動では人前で変顔したり、笑ったり泣いたり恥ずかしい思いもするので、モデルの方で「変なポーズしてみて」とか言われてもスッとできるようになったなと思います。表現の幅が広がりました。

今作もコメディなので、また表現の幅が広がりそうですね。

中川:そうですね、コメディはまだそんなにやったことがないので。でも去年出演した「ラフな生活のススメ」というドラマがコメディだったんですけど、そこでもさっき言ったように僕はコメディとして演じていなくて。精一杯その役を演じることで、その結果観た人が笑ってくれたら嬉しいな、という気持ちでやってたんです。でもその作品をこの舞台のプロデューサーさんが観ててくれたみたいで、それを聞いて「あ、このやり方でいいんだな」って改めて思いました。
今回も未知のジャンルではありますが、全力で演じていきたいです。「ウケるかな、ウケないかな?」とか気にするんじゃなく、ひたすら無我夢中に役の目線に立って演じて、テンパったりするんだろうなと思っています(笑)。ファンの皆さんにとっても、きっと見たことのない僕が見られるんじゃないかな。情けなかったり、かっこ悪かったりするような、がむしゃらな僕が見られるんじゃないかなって思います。

俳優として映像作品への出演も続いていますが、今後ファンの皆様に楽しみにしておいてほしいことなどはありますか?

中川:この舞台を終えてから出演させていただく映像作品は楽しみにしていてほしいです。絶対にこの舞台を通じて価値観が変わっているし、成長していると思うので僕自身も楽しみです。ファンの皆さんにも「成長したな」って思ってもらえるように演じたいので、この舞台の前と後を見比べてみたら面白いんじゃないかな。また一つ違った見方として楽しんでいただけたらなと思います。

『鴨川ホルモー、ワンスモア』から得るものも多そうですね。中川さんにとって、役者としての今後の目標といったものはありますか?

中川:今回、主演という立ち位置で作品を携わらせていただいた時に、演じ方が変わったんです。もう細かいことは考えずに役になりきるしかない、役になりきることしか上演時間の約2時間を耐え抜くやり方は無いんだと感じたので、そのやり方をどんどん極めていきたいですね。主役としての演技を認めてもらえるような俳優になりたいです。

information

ニッポン放送開局70周年記念公演『鴨川ホルモー、ワンスモア』

【原作】万城目 学(「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」/角川文庫刊)
【脚本・演出】上田 誠(ヨーロッパ企画)

【出演】
中川大輔、八木莉可子、鳥越裕貴、清宮レイ(乃木坂46)、佐藤寛太/
石田剛太、酒井善史、角田貴志、土佐和成、中川晴樹(ヨーロッパ企画)、藤松祥子、片桐美穂、日下七海、ヒロシエリ/
浦井のりひろ(男性ブランコ)、平井まさあき(男性ブランコ)、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、岩崎う大(かもめんたる)

event.1242.com/events/kh_oncemore
Twitter

introduction

2浪したのち京大に入学した安倍が、
怪しい先輩の誘いと早良さんへの一目ぼれに任せて入った「京大青竜会」なるサークルは、
千年の昔から脈々と続く謎の競技「ホルモー」をするサークルだった。
当惑とときめき、疑いつつ練習、そしてこの世ならざる「奴ら」との邂逅。
俺たちが開けたのはなんの扉だったろうか。
世界の謎よりも魅惑的な彼女の鼻、そして押し寄せるリグレット。
すべては思い返せば喜劇。
鴨川ホルモー、叶うならワンスモア。

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