1995年にテレビ放送が開始されるやいなや、国内に留まらず全世界的に大きなムーブメントを巻き起こした日本を代表するアニメーション作品『エヴァンゲリオン』。2021年3月には新劇場版の完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』が公開され、102.8億円もの興行収入を記録したことも話題となった本作品が、このたび完全オリジナルストーリーで舞台化。新宿の新たなランドマークとなる「東急歌舞伎町タワー」6階に完成した新劇場「THEATER MILANO-Za」のこけら落とし公演として、2023年5月6日(土)より上演されている。
原案・構成・演出・振付はベルギー、アントウェルペン出身の世界的振付家・演出家・ダンサーであり、2度のローレンス・オリヴィエ賞など数々の受賞歴を誇るシディ・ラルビ・シェルカウイ。
主演を務めるのは数々の映画、ドラマで活躍する窪田正孝。舞台出演は『唐版 風の又三郎』以来4年ぶりとなる。
「Sparkle web」では、叶 トウマ 役の永田崇人にインタビュー。
元々アニメ版のファンだったと語る永田が、本作への出演が決まった時の反響や自身の心境、共演者への印象やシディ・ラルビ・シェルカウイの演出について、さらに幅広い作品への出演を続ける舞台への想いや、舞台俳優としての目標も伺った。
interview
『エヴァンゲリオン』という作品について、永田さんはどんな印象をお持ちでしたか?
永田:個人的にとても大好きな作品です。かなり前にテレビアニメ版を観た時は、最終回でいきなり「おめでとう」って言われた意味が分からなくて、すごく謎めいたまま終わって。でもこの舞台への出演が決まって改めて観直した時に「あ、ここに自分が生きてていいんだ」というすごいパワーをもらったんです。そのパワーをくれた『エヴァ』に恩返しができるよう、僕なりに精一杯やりたいなと思っています。
今回『エヴァ』に出るということで、周りからもたくさんお声を頂きました。いの一番に親から「『エヴァ』やるの!?」と連絡が来ましたね。普段連絡取らない方からも頂いたりして、改めて「すごい作品に関わっているんだな」と感じますが、そこは一旦横に置いといて、今自分ができること、目の前のことに向き合う日々を送っています(※取材時は稽古中)。
本作品への出演が決まった時の心境は?
永田:出演が決まった時は衝撃でした。まさか自分がこけら落としの作品に出られるということに、ちょっと想像が追いつかなくて。俳優をやっていく先に、いつかそんな日が来ればいいなって思っていたので、「えー!? 本当にいいんですか!?」って。
本作品の製作発表の際、一足先にTHEATER MILANO-Zaの舞台に立ちましたが、新しい劇場の印象はいかがでしたか?
永田:劇場に入った時の第一印象は「(内装の)線とかすごくかっこいいな。ちょっと『エヴァンゲリオン』っぽいな」と思いながら見ていました。この劇場のこけら落とし公演に参加できるという喜びを噛み締めながら、稽古に参加していきたいですね。
製作発表では共演者の田中哲司さんから『エヴァ』の舞台化に関して「そこはちょっと手出しちゃいかんところだろう(笑)」なんてお話もありました。おそらく誰もが予想していなかった驚きの舞台化かと思います。
永田:本当に(田中さんと)同じ気持ちですね。「(舞台化)できる!? どうやってやるの!?」っていうのはやっぱり正直な感想としてありました。「映像とか使うのかな? 大きな機体とかも出てくるのかな?」って、ずっと謎でしたね。
稽古に入って、その辺りもだんだん明らかになってきましたか?
永田:そうですね、やっぱり舞台ならではの表現がたくさん詰まっていると感じます。それと、原作のアニメでもエヴァンゲリオンが戦うシーンはもちろん素敵なんですけど、意外と僕はエヴァンゲリオンが戦うシーンよりも、パイロットたちの心情に入っていく話の方が好きだったりするんです。今作の舞台でも、そういう人間の部分がたくさん描かれるんじゃないかなって思ってます。
おっしゃる通り、『エヴァンゲリオン』は登場人物の心に深く入り込む描写が画期的な作品だったかと思います。舞台はアニメとは違う物語ですが、演じる側としてはかなりヘビーな表現を求められることもあるかと思うのですが?
永田:確かにそうですね。演じる上で、否が応でも自分の話、自分自身を役に入れていくわけですから、そういう意味では自分があんまり見たくないこととかも、やっぱりちゃんと掘っていくべきでしょうね。演じる僕にとって、ちょっと苦しい舞台になるかもしれないですね。
今作で永田さんが演じる叶 トウマというキャラクターについても聞かせてください。
永田:はっきり「こう」とは言えないんですけど、でも、なんですかね……、田中(哲司)さんの息子です(笑)。
それしか言えないんですね(笑)。トウマの父親を演じる叶 サネユキ 役の田中哲司さんの印象は?
永田:すごく物腰柔らかくて、とても素敵な方でした。お会いしてみて「あ、こんなに大きい方なんだ」って驚きました(笑)。好きな作品もいっぱいありますし、やっぱり僕、映像だけじゃなくて舞台もやられている俳優さんが好きなので、すごく素敵な方だなって以前から思っていました。「大丈夫かな、俺みたいなのが息子になって」ってちょっと思ってます(笑)。
主人公の渡守ソウシを演じる窪田正孝さんについてはいかがですか?
永田:記者会見の時にも「幸薄い役が多い」と、ご自身でおっしゃってましたけど。僕もやっぱりそういうイメージがあったので、勝手に「内向的な方なのかな? 繊細な方なのかな?」って思ってたんです。でも本作のビジュアル撮影の時に初めて、ちょっとだけご挨拶させていただいて。その時にスタッフさんと、すごく明るく気さくにお話しされていたのが「えっ、俺の想像してた窪田正孝さんじゃない!」みたいな(笑)。でも逆に言えば、あそこまで役に入り込んでそっちに寄せられるっていうのはとてもすごいことだなと改めて尊敬しましたし、なんかちょっとキュンってしたんですよね(笑)。
稽古を通じて、これからもっと関係を深められればいいですね。
永田:そうですね。製作発表の時にも、窪田さんが先に上がられたんですが、帰り際に「崇人お疲れ」って言ってくれて、「なんかサラッと呼び捨てにされた!」ってまたキュンとしちゃって。もしかしたら「くん」ってつけてたかもしれないですけど……(笑)。そういうところがかっこいいですよね。
原案・構成・演出・振付を手掛けるシディ・ラルビ・シェルカウイさんについては?
永田:すごく柔らかくて優しくて温かい方です。ダンサーさんでもあるので身体の構造に関してすごく詳しくて、ワークショップで何かちょっとできないことがあっても「ここの重心をこう移動させればできるよ」といったことをすごく明確に教えてくれるんですよ。そういうタイプの方には初めてお会いしたので衝撃的でした。
本当に明るい方ですし、僕なんかが言うのも偉そうなんですけど、すごく可愛らしい人なんじゃないかなって個人的には思ってます。
演出家としてはいかがですか?
永田:いろんなことにチャレンジして、そこからアイデアを汲み取っていく方なのかなと。僕はウォーリー木下さんの演出方法に慣れているので、そういう意味ではすごく馴染みやすい気はしています。とてもクリエイティブですね。
ラルビさんは製作発表時、「俳優は芝居からダンス=身体表現の領域へ、ダンサーはダンスの表現から芝居の領域へと入っていく」というようなことをおっしゃっていました。演じるに当たり身体表現が重要になってくるかと思うのですが、現段階で手応えや課題は感じていますか?
永田:身体固いんで、僕。そこをどう誤魔化すか……(笑)。いきなり柔らかくはならないですが、よく見えるような塩梅を探っていく作業になると思うので、ちょっと必死にやってみたいと思います。
キャストには素晴らしいダンサーの方々もいらっしゃいますしね。