The Brow Beatが、2024年5月9日からLive Tour 2024『局地的な雷雨』を開催する。
発売中の本誌『Sparkle vol.56』ではRyujiに、デジタルシングル「ワカラナイアイ」そしてツアーへの展望を語るインタビュー、そして「ワカラナイアイ」MV撮影密着グラビアを掲載している。
併せてこの「Sparkle web」では、「ワカラナイアイ」に先行してリリースされたデジタルシングル「無」について、そしてボーカル・Ryujiの現在の心境について語ってもらった。
interview
Ryujiさんのお誕生日である1月17日にリリースされた「無」。この曲はどんな思いで作られたのでしょうか。
Ryuji:すげぇネガティブな話なんですけど、「なぁんにも無いよ」って気持ちで作ったんです。元々、自分がやりたい音楽をやるために始めたのがThe Brow Beatだけど、「1月17日にシングルを出しましょう」という話になったタイミングでは、「何かを作りたい」という欲が湧いていなかったんですよ。書きたいことが無いのに無理に作って嘘はつきたくなかったし、それなら「〝無い〟ってことを書いてみよう」と思ったんです。何も無いなら、この虚無感を書いてみよう、と。今までにそんな奴いねぇんじゃねぇかと思って。
楽曲自体からも悲しい印象を受けるというか。
Ryuji:「無」の前にリリースした2曲が王道のトラックだったので、今回はマイナーコードでちょっと悲しい曲が作りたいなと思いまして。Aメロは当初のトラックから半分くらいにしたりして、とにかくめちゃくちゃ切ったんですよ。
それはなぜですか?
Ryuji:今回は短い曲にしたかったんです。Z世代の方々って、長すぎると曲を最後まで聴かない方が多いらしくて。だから短くても成立する曲を作ったという。しかも今回、1番も2番も全く同じ歌詞にしているんですよ。つまり、最悪1番だけでもいいよ、2番まで聴かなくてもいいよって作りになっているんです(笑)。
〝タイパ(タイムパフォーマンス)〟に特化した楽曲に。
Ryuji:そうですね(笑)。全部聴いてくれないと、この曲で俺が言いたいことは分からないと思いますけど、それはそれでいいのかなと思って。
2番の伏せ字の仕掛けについてもお聞きしたいです。1番と2番が同じ歌詞だからこそ、どんどん伝えたい思いが〝無くなって〟いくというか……〝無〟に近付いていく作りになっている感じがしました。
Ryuji:本当にその通りで。だんだん訳が分からなくなっていくのがいいなっていう。だんだんと無くなっていくのも、全て「無」にかこつけているんですけど。今回は「聴いていてどんどん気分が落ちていく曲を作りたいな」と思っていた中で、自分でも「めっちゃいい曲できたな」と思う。聴いた後に「うわぁ……」ってなるんで、そういう意味でもいい曲ができたなと思いますね。
歌詞にある「トゥルリリ トゥルリバ」は架空の言葉ですよね。
Ryuji:この世に無い言葉を作ろうと思って。それも「無」にかこつけているんですけど(笑)。〝どこにも無い言葉〟ということで、造語を入れた形ですね。そこに別に意味も無いという。作詞にかかったのは1時間くらい。この曲と「な訳ねぇだろ」と「404」は1時間くらいで書けて、瞬殺でしたね。書きやすい歌詞だと一瞬なんです。
先ほどおっしゃっていた「書きたいことが無い状態」を脱するために、意識的にインプットをされたりもしていますか?
Ryuji:インプットかぁ。常々いろんなものからいろんなことを吸収していますけど……、YouTubeって、本当に便利じゃないですか。雑学とか、生物の生態とか、色々見て勉強の日々ではあります。だからどんどん博識になっていっている気はします……分からないですが(笑)。ただ、作詞については別というか……それは一旦お休みで。だんだんと書き上がるスピードが落ちてきているし、書けなくなってきているので。一旦休憩ですね。
歌詞を書きたくなるタイミングはどんな瞬間ですか?
Ryuji:いつも先に曲を聴いて、そこから「書きたい」って気持ちが生まれる。だから歌詞だけ書きたくなることは無いんです。まぁ、曲を聴いた上で「書きたくない」と思う時もありますけど。いや、書きたくないというか……「書けない」が近いかな。曲を聴いて何の構想も浮かばない時は、HAKUEIさんにお願いすることもあります。壮大な、いわゆるヴィジュアル系っぽい曲が最近は書けなくなってしまって。そういうトラックを頂くと「何を書いたらいいんだろう?」ってなっちゃうんですよね。
そういう時は、他のバンドの曲を聴いて吸収したりもしますか?
Ryuji:聴きますけど、吸収のためというよりも昔から好きなものを聴いていることが多いですかね。あと、最近は洋楽ばっかり。ラップとかヒップホップを聴くことが多いです。それとカントリーミュージックにもハマってて。これが安らぐんですよねぇ……(笑)。「実家帰りたいな〜」ってなります。
ご実家にはしばらく帰れていないですか?
Ryuji:2020年から帰っていないので、だいぶ帰れてないですね~。
そういえば、X(旧Twitter)でのお父様のポストが話題になってましたね。
Ryuji:「バズらせろ」ってやつですね(笑)。しっかりバズりましたね~。はははは!
バズりを受けて、お父様からご連絡は?
Ryuji:何も無いですね。送りっぱなし(笑)。そういう人なんで、うちの親父は。
普段、出演されている舞台やThe Brow Beatのライブは観に来られるんですか?
Ryuji:昔は来てましたけど、最近はもう「移動が疲れるからいいわ~」みたいな感じで。これまで結構観てくれたし。ライブビューイングがあったり、仙台まで俺が公演に行けば観てくれますけど。でも別に一緒に飯を食べたりもしないし、楽屋でパッと会うだけで。なんなら楽屋に来ない時もあるくらいで。
結構ドライなんですね。
Ryuji:ドライなんです。でも、今年の4月末くらいから仕事で地方に行くことが多くて、多分1カ月くらいは家を空けちゃうんですよ。さすがに1カ月も後輩に猫の面倒を見てもらうわけにもいかないし、ペットホテルに行ってもらうのも可哀想だし……。1カ月だけ、両親のいる実家に猫を預けようかなと思ってますね。
そして〝もう一つの新曲〟、「The Brow Beat小学校校歌」についてもお伺いしたいです。以前のインタビューで、「もしまた(「The Brow Beat 学園校歌」を)やるなら2番を作る」とHAKUEIさんと話されていた記憶がありますが、まさか小学校の校歌として帰ってくるとは……(笑)。
Ryuji:へへへ。退化してましたね。
今回、小学校校歌を作ることになった経緯は?
Ryuji:全然覚えてないです(笑)。完全にノリで、「小学校でいっか~」みたいな。多分「2番を作る」って話も誰も覚えてなかったから(笑)。スタッフさんから「デジタル配信もあるので、校歌とかを入れてもいいかもしれないですね」って話を受けて、「じゃあやっときますか~」って感じで。さっくり決まりましたね。
前作の「The Brow Beat 学園校歌」同様に、お二人が1フレーズずつ好き勝手に作って全然噛み合っていない感じがいいなと思いました(笑)。
Ryuji:ははは! HAKUEIさんがちょうどその時、自転車をパクられて(笑)。だから自転車の話しかしていないんですよね(笑)。
以前のインタビューで話していた、あのお気に入りの電動自転車ですか!?
Ryuji:そうですね、あの時話していたやつです。
せっかくいいものを買ったと喜んでいらっしゃったのに……。
Ryuji:そうなんですよ、可哀想に。どうなったんですかね? 返ってきていたらいいんですけど。(スタッフ:保険は下りたけど見つかってはいないらしいです)え!? 見つかってないんですか〜。でも、せめて保険が下りて良かったです(笑)。
「The Brow Beat小学校校歌」は今回のツアーで歌いますか?
Ryuji:「校歌」はやらない! ぜってーやらないです!(笑) スベる未来しか見えないんで……。もし今後、フェスとかいろんなアーティストさんが出る中に呼んでもらえる機会があったら、「校歌」で始めたいなとは思いますけどね。
それが実現したら、騒然ですね(笑)。
Ryuji:はははは! そんなことしたら、ペットボトルとか飛んできちゃうか(笑)。やっぱりどうしても、最初の「The Brow Beat 学園校歌」が強かったなって思うんですよ。今考えても、なんであんな面白いのができたんだろうっていうくらい面白かったので。今回の「小学校校歌」は「あ、狙っちゃったな」って自分で思っちゃいましたね。「あ〜狙いにいったんだ、Ryuji……」って。「こいつ〜、2作目はウケないぜ〜」って、自分で思ってます(笑)。どの映画も2作目は「あぁ……」ってなりますから! 2の方が面白いなんて聞いたこと無いんで! しょうがないですね、こればっかりは。
今回のツアー 『局地的な雷雨』もどのようなものになるか楽しみですが、前回のツアー(The Brow Beat Live Tour 2023 “The Five Senses”)を振り返ると? 結成&デビュー5周年のアニバーサリーツアーということで、1stアルバムからリリース順にThe Brow Beatの歴史をなぞるようなセットリストでした。
Ryuji:作るのが難しいなぁという思いが一番にありましたね。感慨深さを感じたりするのかなとか思ったんですけど、それよりも起承転結を作るのが難しくて。やればやるほど、どんどん曲が複雑になってきているなと思いながらツアーをやっていた記憶です。1stアルバムの時はもっとシンプルだった気がするんですけど、今はすげぇ分厚い感じになっていて。曲としての進化も、バンドとしての進化も感じられたツアーになったと思っています。
確かに、年々ヘビーさを増していってますよね。
Ryuji:そうですね。でも俺、少し前に「メジャーになってから、メジャーっぽい曲調になりましたよね。曲が軽くなったと思います」みたいなメッセージを頂いて。どこがそう思わせるんだろう? どんどん重たくなってるんだけどな……って思ったことがあったんですよね。どの曲のことを指して言っているのかは分からなかったんですけど。
メジャーデビュー以降のポップな感じの楽曲というと、「ハレヴタイ」になるのでしょうか。とはいえ、カップリング曲に「シンデレラ」も収録されていたりもするのでヘビーさは健在というか……。
Ryuji:「ハレヴタイ」は確かに明るい楽曲か。でも、それしか聴いてないってことあるのかな?(笑)。
Ryujiさん自身は「インディーズもメジャーも変わらない」とずっとおっしゃっていますもんね。
Ryuji:変わらず、やりたいようにやってますね。たださっきのメッセージの件はHAKUEIさんにも言っちゃったので、次のアルバムはさらにえらいことになっちゃうだろうなと思っています(笑)。どえらい曲が作られる気がするので、それも込みで今後が楽しみですね。それに今だって、歌詞に使っちゃいけない言葉を使って止められることがあるぐらいなので。それこそ「シンデレラ」は書き直してますし(笑)。
歌詞でいうと、今後も「21グラム」のように歌詞がアップデートされていくこともありそうですか?
Ryuji:あれに関しては「こっちの方がいい歌詞だな」って思いついたからやっただけで、他の曲で「書き直したいな」って思っているものは無いですかね。ただ、収録済みの楽曲の歌い直しとかはしたいです。でもまだちょっと早ぇなと思って。それってめちゃくちゃ売れたアーティストがやるやつやな、と思うので(笑)。
キャリアを重ねていった先に、そんな未来があったらいいですね。ちなみにThe Brow Beatは5周年を迎えましたが、10年目や15年目を思い描くことはありますか?
Ryuji:無いです。何にも無い。俺、明日のスケジュールを覚えるので精一杯で……(笑)。別の現場で友達や前の共演者に会う機会があったりするじゃないですか。で、「本番いつから?」ってみんなに聞かれるんですけど、いつも分からないんですよ。その日生きるので精一杯なので、よく年末年始の取材で「今年の抱負」とか「来年はどうしますか?」とか聞かれた時も、無いものを無理矢理捻り出しているような状態で(笑)。もちろん仕事は決まっていますが、自分自身が来年、何をやっているか思い描けないんですよ。長く続けられるよう、なるべく頑張っていきたいですけど。まぁ……いつか大きい会場でライブとか、できていたらいいですけどね。野外ライブもいいなぁ。特にフェスに出たい。ファンの方以外にも囲まれたアウェーな場所でのライブにも、いつか挑戦したいです。
『局地的な雷雨』と名付けられた今年のツアーも、いよいよ開催が迫ります。
Ryuji:『局地的な雷雨』というだけあって、全公演しっかりぶっ壊しにいこうと思っています。The Brow Beatは発散系の歌も多いので、皆さんと一緒に日頃の鬱憤を発散できたらと思います。このライブに来たらきっとスッキリすると思うので、皆さんも全部ぶっ壊す気持ちで来てください。
information
デジタルシングル「無」
配信中 / Dreamusic
The Brow Beat Live Tour 2024『局地的な雷雨』
【日程】2024年5月9日(木)
【会場】大阪・BIGCAT
【日程】5月10日(金)
【会場】愛知・NAGOYA ReNY limited
【日程】5月12日(日)、5月13日(月)
【会場】東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)
【チケット】
公式サイト
thebrowbeat.jp
Twitter
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Ryuji(The Brow Beat)掲載
『Sparkle vol.56』発売中
内容:佐藤流司(東映ムビ×ステ『邪魚隊/ジャッコタイ』_鱗蔵 役)
本文8ページ(インタビュー+コラム&撮り下ろしグラビア)
+巻末綴じ込み付録:ツヤツヤ厚紙ピンナップ
Ryuji(The Brow Beat)(digital single「ワカラナイアイ」& The Brow Beat Live Tour 2024『局地的な雷雨』)
本文4ページ(インタビュー&「ワカラナイアイ」MV撮影密着グラビア)
+巻末綴じ込み付録:ツヤツヤ厚紙ピンナップ
credit
テキスト:田中莉奈