2021年のミュージカル『魍魎の匣』に続き、京極夏彦原作のミュージカル『鉄鼠の檻』が上演中。
同名原作は、「百鬼夜行」シリーズの第4弾として刊行された長編推理小説だ。演出を担当するのは、21年に引き続き、板垣恭一。
禅寺を舞台に、禅とは何か、悟りとは何かをミュージカルで表現していく。
〝京極堂〟こと主人公の中禅寺秋彦 役は、ミュージカル『魍魎の匣』から小西遼生が続投。
探偵の榎木津礼二郎 役を北村 諒と横田龍儀がWキャストで務める。
「Sparkle web」では再び榎木津を演じる北村に、榎木津を演じる楽しさや、歌への思いを聞いた。
interview
前作から約2年半ぶりに榎木津を演じられますが、久々に役に向き合うにあたって何かご準備されたことはありますか? 稽古に入ってみたらすぐに戻れたなという感覚があったなど……いかがですか?
北村:とてもすんなり入れた感覚がありましたね。もちろん細かいところ……彼のその瞬間瞬間での居方みたいなところは、稽古の中で色々詰めていかなくてはならないんですけど、榎木津としてそこにいるということ自体は僕としては割とすんなり入れたなという気がしていますね。
前作はどういう感覚で終えましたか?
北村:コロナ禍真っ只中の状況での上演だったけれど、それでもお客様に観に来ていただけたということがすごく記憶に残っています。もちろんそれは、京極夏彦先生の作品のパワーあってのものですが、出演者の方々も層が厚いというか、僕がこれまで共演したことの無いミュージカル俳優の方々が多かったので、僕の中では〝未開の地〟だったというか(笑)。
ちょっとドキドキな現場だったんですね。
北村:そうですね。前回はかなりドキドキしながら稽古と本番を迎えた記憶があります。コロナ禍でなかなか外に出かけたりすること、ましてや劇場に足を運ぶということがとても難しい時期でもあった中で、たくさんの方が観に来てくださって本当にありがたかったですし、そのおかげで今回の続編上演にも繋がっていると思うので、今も感謝の気持ちでいっぱいです。
『魍魎の匣』という膨大な原作を、ギュッと2〜3時間に収めることへの難しさや面白さはどういう風に感じられましたか?
北村:もちろん作品を伝えるっていう、我々の役割としての大変さはありますけど、演出の板垣さんが脚本に起こしてくれたり、ミュージカルとしてやっている時点で、大変さみたいなものは解消されている気がしています。
これがストレートプレイだったなら、時間ももう少し掛かったんじゃないかと思うんです。でも歌が入ることで、すんなりと情報が入ってきたり、映像を使ったりもして。そうしたいろんなもののおかげで、負担みたいなものがそんなに多くなくて、実は。
その中で僕らが演じるにあたって、どう伝えていくかはそれぞれ考えるところではあるんですけど。この作品がミュージカルであるということはとても大きな意味があるのかなと思っています。
板垣さんからは演出面でどんなオーダーを? 自由に、というイメージも強いですが。
北村:自由にやらせていただきつつ、「物事に応じていく速度感を早めてほしい」と稽古場でおっしゃっていましたね。それは喋るスピードとかではなくて、言葉を受けて感じて、走ってっていう反応のスピード。みんなでパスを繋げていくみたいな、物語としてのスピード感をすごく大切にしていらっしゃるんです。
きっとそれは、お客様がストレスなく観られる鍵にもなるんじゃないかと思っています。前作でもそうだったのですが、台本に〝こういう演技のプラン、芝居の方向でいきます〟みたいなものが書いてあるんです。四角に囲ってある文字は映像で出します、とか。先に全部書いてくださって、最初から演出の方向性を示してくださるので、僕らとしてもすごくありがたいですし、やりやすいですね。
Wキャストの横田龍儀さんと一緒に稽古してみて感じていることは?
北村:日々、新しい発見をさせてくれます。個人的には久しぶりのWキャストなのでワクワクしていて。一人では思い付かないようなことに思い至らせてくれるから、よりお芝居の幅が広がっていくのを感じています。
もちろん僕が演じる榎木津と龍儀が演じる榎木津は全然違いますし、それぞれの榎木津を大切にしながらも、お互いに刺激を与えられているんじゃないかな。だから両方とも観るお客様は、新鮮な気持ちを味わっていただけると思っています。共演者の皆さんは大変かもしれないけど(笑)。
違えば違うほど、お芝居への対応も変わっていきますもんね。横田さんと、役について話し合ったこともありますか?
北村:龍儀が、センターに入りたがらないんですよ! 「そうは言っても、榎木津はセンターが似合う男だからな〜」みたいな話をして(笑)。「絶対センター行った方がいいよ」「行けるとこはバンバン入っていこう!」って言いました!
センターが似合う男ですよね(笑)。改めて北村さんの榎木津観というか、どんな人物と捉えて演じていらっしゃるか、お伺いできますか?
北村:すごくざっくり言うと〝変人〟なんですが、変人もいききると魅力になるんだなって感じさせてくれる人物なんですよね。彼の〝自分を信じて突き進む姿勢〟が魅力だと思っているので、そこさえブレなければ、何しても大丈夫だなと思っています。
逆に言えば、他の人ができないようなことも榎木津ならできてしまうんですよね。そういうキャラクター性が上手く機能すれば、作品を加速させたり、物語のスパイスになれるんじゃないかと思って演じています。
今回もアドリブはありますか?
北村:……はい!(笑) ちらっちらっと、ありますね〜。しかも今回は、登場から「そうくるか!」って思う展開になります。……って書いたらバレちゃうか(笑)。ふふふ。
キャラクターごとにそれぞれの役割があるとするならば、榎木津は〝飛び道具〟なので、今回も作品のいいアクセントになっているのではないかなと思います。今回は題材が難しい分、どのキャラクターも動くのが難しいんですよね。だから榎木津がいっぱい動いて、場をかき乱して動かしていけたらいいなと思っています。
榎木津として歌う時に心掛けていることは?
北村:もう、オンステージで(笑)。センターで伸び伸びと、堂々と楽しく歌うことだけを考えていますね。
自分の名前を歌う曲が、前回もありましたもんね。
北村:自己紹介ソング、今回もあります(笑)。なので、ぜひ今回も楽しみにしていただければと思っています。しかも第2弾はWキャストなので2パターン楽しめるということで。曲自体はもちろん一緒なんですけど、絶対に僕と龍儀のアプローチは違うはずなので、2度美味しい榎木津礼二郎を楽しんでほしいです。
龍儀と一緒に作っていくことで、龍儀がそう来るなら、僕は逆にこっちからいってみようかなとか、こういう仕掛け方をしてみようかなとか、芝居の選択肢が増えるのが演じていてもすごく楽しいんです。
改めて、『鉄鼠の檻』のストーリーについては、どういう風に感じましたか?
北村:禅や宗教、そういうものを扱っているので、個人的にはあまり馴染みが無い言葉がたくさん出てきて、最初はすごく混乱しました。まず人の名前から「これは名前なのか!?」みたいなところから始まったりして(笑)、結構難しかったんですけど。
やっぱりそういう部分も、人が板の上で演じることでかなり分かりやすくなっていると思いますし、理解が進むと「こんなに深いんだ」と感じる瞬間もたくさんあって、面白いなと思いました。作中のセリフでも「非日常だ」というのがあるんですけど、「確かに」と演じながら感じる時があります。
本作は、映像化・舞台化も未だされていなかった作品でもあります。そういう意味でも、どう舞台化されるのだろうという期待感が募ります。
北村:あの原作の厚さを見て「やろう」って思う人はなかなかいないですよね(笑)。板垣さんも言ってました、「これをやろうって思う人はいないだろうから、逆にやってやろう」みたいな。だからこそ挑戦したい、という風におっしゃっていたので、面白い人だな〜って思っていました。そういう、人がやってないことをやりたがる板垣さんを僕は信頼してるし、稽古もすごく楽しいですね。
挑戦することに大きな意義がある。
北村:挑戦できるって、すごく幸せなことだと思うんです。人生の限られた時間の中で、同じようなことばっかやっても意味が無い……とまでは言いませんけど、どうせやるなら新しいことや、まだやっていないことをしたいし、自分の知らない世界に飛び込みたいなって僕は思うので。だから板垣さんのチャレンジ精神には深く共感できる部分があります。
そういう意味で、このシリーズに参加したことで新たに得たものはありますか?
北村:『魍魎の匣』の時、(小西)遼生さんの歌を間近で聴いて、もっと歌を上手く歌えるようになりたいって強く思ったんです。もちろん、遼生さん以外のキャストの皆さんも当たり前に歌が上手いし、それを表現として見せている姿がすごく魅力的に見えて。歌の持っている力ってすごいなと改めて思わされましたし、「こんな風に歌えたらすごい楽しいだろうな」、「世界が広がるだろうな」と感じたので、それをきっかけにボイトレに通い始めました。
そうして前作以来、歌に対しての意識が大きく変わった中で、京極先生のシリーズ2作目に再び参加できることが本当に嬉しいですし、僕にとっては〝新たなミュージカルへの挑戦〟ができる作品でもあるので、幕が開くのがとても楽しみです。
今回また小西さんとご一緒することで、さらなる刺激を受けているのでは?
北村:相変わらずすごくて……。なんでしょうね? 歌の説得力がすごいんですよね、やっぱり。遼生さんの歌がめちゃくちゃ好きだなって改めて感じつつ、日々勉強させていただいています。
ご本人にはそういう思いを伝えているのですか?
北村:めっちゃ言ってます。「好きです! ファンです!」って(笑)。
素敵です! 座長としての小西さんについてもお聞きしたいです。
北村:〝安心感〟ですね。遼生さんはすごく勤勉家で、周りも見えている人。だから遼生さんがそこにいてくれる安心感がすごいんです。
もちろん、板垣さんが作品の脚本演出を務めているので、全体的な方向や個々の芝居は見てくださってるんですけど、その中でさらに「こうした方が分かりやすいんじゃないか」などを、遼生さんが考えてくれたりしていて。「ここはこうしてみよう」という提案などをいくつもしてくださるんですよね。
それだけ作品のことを常に考えているし、それがお芝居の説得力にもなっていて、僕らからすると安心感にも繋がっている。「遼生さんがいたら大丈夫だ」と思える、とても心強い座長ですね。
では最後に、榎木津的注目ポイントを。
北村:ミュージカル『鉄鼠の檻』においての榎木津は、他のキャラクターたちとは背負っているものが違うので、「他の人にできないことをしよう」みたいなパッションを感じられると思います。みんなの中で一番楽しんでる人物でありつつ、この作品のライブ感はもちろん、舞台上で生きている人たちのライブ感を担える存在でありたいなと思っています。
今回は龍儀とWキャストという特別感もありますので、ぜひどちらも楽しんでいただきたいです。
information
ミュージカル『鉄鼠の檻』
【日時】2024年6月14日(金)~6月24日(月)
【会場】東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
【日時】6月28日(金)、6月29日(土)
【会場】大阪・サンケイホールブリーゼ
【原作】京極夏彦「文庫版 鉄鼠の檻」(講談社文庫)
【上演台本・作詞・演出】板垣恭一
【作曲・音楽監督】和田俊輔
【出演】
中禅寺秋彦 役:小西遼生
榎木津礼二郎 役:北村 諒/横田龍儀(Wキャスト)
関口 巽 役:神澤直也
和田慈行 役:上田堪大
山下徳一郎 役:高本 学
杉山哲童 役:小波津亜廉
仁秀 役:畠中 洋
他
【配信】
6月22日(土)13:00公演(全景映像)/18:00公演(スイッチング映像)
6月23日(日)13:00公演(全景映像)/18:00公演(スイッチング映像)
チケットぴあ
www.tessonoori-musical.com
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※応募締切:2024年6月29日(土)23:59まで
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テキスト:田中莉奈
撮影:平田景子
ヘアメイク:車谷 結(zhoosh)