【橋本祥平、梅津瑞樹がW主演】舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」【公演レポート】

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北川恵海による第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作を原作に、W主演を務める橋本祥平と梅津瑞樹が鮮やかな会話劇に仕立て上げた、舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」が東京・シアター1010で公演中だ(2023年4月30日(日)まで)。

橋本演じる青山 隆はブラック企業にこき使われ、心身共に衰弱した営業職の青年。
連日休み無しの勤務に疲れ果て、帰りの電車が滑り込む線路にフラフラと飛び込もうとしてしまう。
間一髪、その腕を引き青山を救う男。
小学校時代の同級生「ヤマモト」を名乗るその男は「久しぶりやな〜!!」と場違いなほど素っ頓狂な声を上げ、再会を祝し青山を飲みに連れていくが……。

梅津演じるヤマモトが現れた瞬間、キーボード、ヴァイオリン、タップ、ボーカルからなる生演奏が劇場中に鳴り響き、物語の始まりを告げる。

関西弁と軽妙なトークで凍てついた青山の心を解きほぐし、次第に笑顔を引き出してゆくヤマモト。
一歩間違えば軽薄で胡散臭いキャラクターともなりかねないヤマモトだが、セリフの端々に見える気遣いや優しさが、青山だけでなく観客の緊張感も和らげてゆく。梅津の類稀なる描写力が光る場面だ。

記憶に無い同級生の登場に初めは訝しんでいた青山も、ヤマモトの魅力から徐々にその心を開き、スポーツ観戦、ショッピングと人間らしい生活や笑顔を取り戻してゆく。
さらに苦手としていた営業の仕事でも手応えを掴み、青山の人生はこのまま上手く回っていくように思われたが……。

通常のセリフ部分だけでなく青山の心の声や場面転換の説明など、膨大な量のセリフを担当する橋本。舞台上にほぼ出ずっぱりで物語をグイグイと引っ張ってゆく。
時には板の上でのたうち回り、時には全ての感情を失くしたかのような表情を見せる橋本の表現力に、客席はただただ固唾を飲み物語の行く末を見守るばかりだ。

心をえぐられるようなつらいシーンもある本作だが、パフォーマーたちによる青山の心情に寄り添うような生演奏と、常に青山を見守りつつも時には核心的な言葉を放つヤマモトの優しさが劇場全体を包み込む。
テーマ自体は非常にシリアスだが、あくまでもエンターテインメントとして届けんとするカンパニーの想いが随所に感じられた。

何のために、誰のために生きるのか。
人生を、社会を変えるにはどうすればいいのか。

橋本曰く
「宇宙飛行士の方が宇宙から地球の夜を見た時、圧倒的に日本が光っていたと。日本列島の形が分かるくらい夜も電気が点いているんですよ。
それを見て、『この国って、そんなに仕事していないと回っていけない何かがあるのかな?』と不思議に思ったことがあるんです」(『Sparkle vol.52』インタビューより)

物語の終盤、青山は上司に、職場に、そして客席に向けて魂の訴えを放つ。
未だ高い自殺率を記録し続けるこの国に、本当に必要なメッセージがそこにあった。

「周りに『生きてさえいればいいんだよ』と言ってくれる人がいることが救いになるんだろうなと思います」(梅津瑞樹『Sparkle vol.52』インタビューより)

末筆ながら、終演後に配られる来場者特典についても触れておきたい。
全10名のキャスト(アクター5名+パフォーマー5名)による直筆の≪ちょっと元気の出るメッセージカード≫。
それはまるで青山に寄り添うヤマモトのように、観客一人一人に届けられたカンパニー一同からの想い。
本作のテーマをギュッと詰め込んだようなプレゼントに、終演後も温かな気持ちにさせられた。

information

舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」

【日程】2023年4月22日(土)〜4月30日(日)
【会場】東京・シアター1010

【原作】北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
【演出】町田慎吾
【脚本】葛木 英

【出演】
青山 隆 役:橋本祥平
ヤマモト 役:梅津瑞樹/

五十嵐 役:中村太郎
部長 役:前田晃男
ヤマモトの母 役:甲斐田ゆき

【パフォーマー】
Tap:SARO / 村田正樹(Wキャスト)
Vocal:稲泉りん
Violin:後藤泰観/

Keyboard & Vocal:杉本雄治

【声の出演】
髙木 俊
武藤晃子

【チケット】
イープラス
詳細は公式サイトにて

chottoimakara-stage.com
Twitter

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青山 隆 役:橋本祥平、ヤマモト 役:梅津瑞樹 掲載
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テキスト:田代大樹

ⒸEmi Kitagawa 2023

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