2019年よりスタートしたミュージカル『憂国のモリアーティ』が、5作目となる「Op.5 -最後の事件-」を2023年8月24日(木)から27日(日)まで大阪・メルパルクホール、9月1日(金)から10日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演する。
「Sparkle web」では、諮問探偵として卓越した推理力で事件を解決するシャーロック・ホームズを演じる平野 良と、シャーロックの相棒で元軍医のジョン・H・ワトソンを演じる鎌苅健太の対談を実施。
ここまで積み上げてきた彼らの歴史と、ついに迎える「最後の事件」に向けて、率直な思いを語ってもらった。
interview
ついにOp.5の上演です。Op.4時の弊誌インタビュー(Sparkle vol.50)で、平野さんは「作品が育つというより我々が育った感じがする」というお話をされていました。改めて鎌苅さんにもここまでの歩みに対して感じていることを教えていただきたいです。
鎌苅:やっぱりOp.1の時は色々戦うというか、「どうやっていくか」みたいなことをみんなで話し合ったりもしたんですけど。どんどんそんなに語らなくなったよね?
平野:そうですね。まぁ元々ホームズチームはそんなに話し合わないですけどね!(笑)
鎌苅:アホなことは喋るんですけど(笑)。チームワークが良くて、お互いが出したものに対しての信頼感が高いんです。上演を重ねるごとに結束力が強まっていったし、物語も色濃くなっていって、自分自身としてすごくもがける作品になっているなと感じています。
原作はもちろんですが、このカンパニーはミュージカル『憂国のモリアーティ』自体をすごく大事にされている印象が強いです。ここでしか作り上げられないものを求めて、作るべきものへの思いをミリ単位で合わせていっているイメージでした。
鎌苅:そうですね。俺の中でも、良が「ミュージカルだから」というのをOp.1からずっと言ってくれたっていうのが大きい。絶対に音楽を大切にしないといけないっていう思いが形になっている気がします。
平野:みんな、音への捉え方がOp.1の時とは全然違うじゃないですか。俺もそうだし(鈴木)勝吾くんもそうだし、全員の音楽への向き合い方が変わったのは強く感じます。特にクボヒデ(久保田秀敏)はそれを如実に感じる。ずば抜けて上手くなったし。
鎌苅:うん。
平野:あと井澤(勇貴)もね。元々上手かったけど、やっぱり意識が変わってる。
鎌苅さんもその実感はありますか?
鎌苅:僕もずーっと必死ですよ(笑)。ね、色々話したもんね。
平野:うん。やっぱり難しいですからね、音楽っていうのは。
鎌苅:難しいね。だからそういう意味で“苦しさが分かった”っていうのは良かったかな。怖さもあったし。だからこそ音を大切にしようとする気持ちもめっちゃ増えたんだと思う。
今作では、過去の曲も出てくると伺いました。もう一度過去作のナンバーを歌い直すに当たっての思いは?
鎌苅:どうなるのかも分からないもんね?
平野:分からないですね。ちょっと忘れちゃってるかも(笑)。でも最初に台本を読んだ時はやっぱすげぇ胸熱でした。オープニング前に泣くんじゃないかってくらい。今までの苦労も喜びも思い出すし、しかもOp.2のタイミングでコロナ禍に入ったりもしたし。そういう当時の状況とかも含めていろんな思いが詰まっている作品なので、「これ歌っていた時はこうだったな」っていうのがフラッシュバックしてくるというか。オープニング前に今までのナンバーをダイジェストのように繋いでいくっていうのは、こうして5作続いてきた今回だからこそできることなので、年月の凄さを感じますね。
鎌苅:今回はみんなソロもあるから。そういう意味でもOp.5ならではの演出だなと思います。
いろんな日々も蘇ってくるというお話でしたが、今までで忘れられない出来事は?
平野:いっぱいありますよね。ゲネプロで歌詞が分からなくなっちゃって、そこをアドリブで繋いだこともあったし。
鎌苅:あれびっくりしたね。
平野:トラブルもいっぱいありましたね。
鎌苅:何年からスタートでしたっけ?
平野:2019年だね。
鎌苅:だから今年で4年か……。濃かったですね。必死な4年間だったから、今回はいろんな意味で全部出せる公演にしたいな。でもここまでくるとさ、台本の言葉がスッと頭に入ってきますよね。読んでてみんなの声が聞こえるから。
平野:そうだね。
1984年5月20日生まれ、神奈川県出身。最近の主な出演作に、舞台「信長未満 -転生光秀が倒せない-」(明智光秀 役)、CCCreation Presents 舞台「桜姫東文章」(清玄 役)、ミュージカル「伝説のリトルバスケットボール団」(ジョンウ 役)など。2023年11月8日より、「2.5次元ナビ!シアターVol.2~Show Must Go On~」の演出・出演を控える。Twitter
ホームズチームはそんなに打ち合わせをしなかったそうですが、どのように作り上げてきたのですか?
平野:みんな稽古をやるに当たって「ああしよう」「こうしよう」って話し合う前に最初は各々自由にやってみて、お互い「こうしたいんだろうな」っていうのを感じつつ、2回目に調整していく感じでした。それくらいの関係性が心地いいチームではあったかなと。
モリアーティチームはやっぱり全員がぎゅっとしないといけないから、かなり緻密にミザンスを詰めて5人の心情を表していくために西森さんとみんなで作っていっていたと思うんですけど。ホームズチームはみんなの自由奔放さがチームのカラーなので、あんまり「こうやって動こうか」みたいな話はしないですね。
その中でもシャーロックとジョンの“相棒”という関係性をお二人は作り上げてきたわけですが、二人の関係性においての変化、スタートから現在について感じることは?
平野:芯の部分は変わらず……ですかね。ジョンは一貫してあったかくて、シャーロックもどんどん溶けていくというような感覚があります。今回は人に思いを伝えるのが苦手だったシャーロックが色々学んできた中で、ジョンから最後のお説教をされるわけですけど。
鎌苅:ふふふ(笑)。なんだろう、普通の人でもまっすぐに“好き”って難しいじゃないですか。でもそれができる素敵さがジョンにはあって。そしてシャーロックにはジョンを惹きつける圧倒的な何かがあるんです。僕は最大限のリスペクトと、どこかでコンプレックスを感じながら演じてきた部分があります。平野さんのシャーロックは簡単にそう思わせてくれるので、受けたそのままの気持ちで表現できるんですよね。
平野:受け皿になってくれるというか、しっかりと受け入れてくれるんだよね。毎回寸分違わず同じ芝居で臨めているかっていったらどうしても変わっちゃうところがあって。それをしっかり受け止めてくれるんですよ。ちょっとおかしな方向に行っちゃっても、しっかりその中で収めてくれるっていうのがジョンなので、すごく助かっていますね。
鎌苅:良のシャーロックはどこまでもワクワクさせてくれるんですよ。自分の想像だにしないものを見せてハッとさせてくれるから。二人の関係性において、ジョンは受けの役だと思うんですね。発信をする役割もあるんだけど、発信するためには受けないと始まらないから。そういう意味で、楽に受けられる芝居をしてくれるのがすごくありがたいんですよね。
そんな二人がOp.4で屋根の上で歌ったシーンは、新鮮さもありつつ胸が熱くなりました。
平野:最初、シャーロックはクセが強いのに対し、ジョンはすごくまっすぐ歌うので、どう混ざるのかなぁって思ったんです。でもいざ歌ってみたらすごく心地良くて。そして、歌を通してシャーロックがジョンにどれほど感化されていたのかが分かりました。今までシャーロックは“歌う”ことを自分だけのものと捉えていたんだけど、誰かと歩調を合わせて歌うことがいつの間にかこんなに気持ち良くなっていたんだって気が付きました。
鎌苅:これまで意外と二人で歌わなかったもんね。
平野:確かに確かに!
鎌苅:この人、すぐウィリアムと歌いたがるので。
平野:そうだね(笑)。
鎌苅:俺もどこかで寂しいんだよ。鎌苅としても寂しいし、ジョンとしてもどこか寂しい。ジョンがウィリアム……犯罪卿というものに対して持っている思いなんだろうなって感じます。自分のコンプレックスをちゃんと表現して、そこに思いもよらない言葉が返ってきて。シャーロックとの関係性の雪解けというか……相棒だったのがやっとちゃんと親友になれた瞬間だったと思います。でも変わらず相棒だぞっていうところもあって、一つまた層が厚くなったなと。……ミルフィーユのような(笑)。
平野:ミルフィーユですね!(笑)
鎌苅:心が晴れる歌だったし、自分自身も成長できたと思います。ただ、「OK、全部受け止めるよ」っていうスタンスにジョンがなったところで、またこの人(シャーロック)がやらかすので(笑)、感情の落差がすごかったです。シャーロックがラストナンバーを歌っているのを裏で聴いている時は本当にキツくて。銃を撃って捕まったあと、ジョンが「シャーロック!」って呼んで、シャーロックが牢屋で曲を歌うじゃないですか。僕はそこで、ジョンがあの後あそこから帰っていくのを想像していたんですけど、もうキツくて。
平野:あのシーンは舞台の後半だから僕の思いも膨らんできちゃって、毎回どんな芝居をしていたかっていうのをあんまり覚えていないんですよね。
鎌苅:面白いよね。初めはさ、俺の方を見て最後の一言を言ってたけど、途中から見てなかったし。
平野:見てなかったかもしれないですね……。
鎌苅:そっちの方が俺もクるとか。公演を重ねるごとに芝居を変えていたのも印象的です。
平野さん自身の気持ちも混じっていくからこその変化でしょうか。
平野:どうなんですかね? あんまり分からないですね(笑)。
鎌苅:俺、過去公演の変化も覚えてるよ。Op.1か2で、次のシーンに行くために真ん中から捌けてきた瞬間に「はぁ……」って脱力しちゃった時あるじゃん。「大丈夫、大丈夫」って声をかけた記憶があるんだよね。なんか、色々飛んじゃった感じだったのかなぁ。
平野:……もう、ビョーキですね。はははは!
鎌苅:そういうところが役者さんですよね。
色濃い日々を経てのOp.5。期待が募ります。
平野:お客さんはもうストーリーを知っているだろうから、一番の注目ポイントは“どこが歌になって、どこが切り抜かれるか”だと思うんです。あのシーンはどう表現するのかなってきっと想像すると思うんです。現時点(※取材時)では稽古に入っていないので演出に関してまだ話せることは無いんですけど、これだけは言えると思うんです。Op.5は“ショートケーキの最後のいちご”だってこと。一番楽しみに残しておいた感じのね?
鎌苅:なるほどね!
平野:楽しみでもあるし、ちょっと寂しくもある。どう食べていこうかすごく悩むじゃないですか。「楽しみだけど、これ食べたら終わっちゃうのか」みたいな一抹の不安があるでしょ。期待感だけじゃないというか。「楽しみだな」って心から思えていない……心のどこかに寂しさがある気がするんですよね。あれもできるしこれもできるし、今までできなかったことや繋いできたからこそできるいろんなことへの期待感も勿論あって。繋いできたものの集大成だと思ってやるぞっていう気持ちもあるからこそ、複雑っていうか。
鎌苅:あと、「怖い」もあるよね。それは自分のことじゃなくて! 「ここがああなっちゃうのか」っていう。ウィリアムとシャーロック、勝吾と良がああなっちゃうのか、っていうのが、なんかもう……うぅ〜ってなっちゃう。
平野:そうだね。そしてこの作品はアンサンブルのみんなもすごくプロ意識が高いからね。それはOp.4に如実に現れているんですけど、ほぼみんな役付きで出てくださっているんです。アンサンブルの皆さんが演じてくれる市民たちが抱える“苦悩”、それが描かれないとモリアーティチームもホームズチームも活きないんですよね。市民の苦しみをどこまで本気で表現できるかを大切にしているこのカンパニーにおいて、“市民と貴族が手を取るシーン”は今回の見どころになってくると思います。そのシーンはこの作品の一つの結末……モリアーティ・プランの結末でもあるので。それを僕自身が楽しみにしているところですね。
鎌苅:どうなるんだろうね。
平野:言っちゃえばあそこがゴールだからね。とても大切なシーンの一つだと思いますね。
鎌苅:でもあんな生き方できないよね、俺ら。日本ではなかなかそういう闘いからは遠ざかっている感じがするから。
平野:でも、若手俳優の戦国時代を生き抜いてきたじゃないですか!
鎌苅:おめーもじゃねぇか。……って、ダセェな、俺ら(笑)。
平野:ははははは!
1984年2月17日生まれ、大阪府出身。最近の主な出演作に、舞台「Les Misérables~惨めなる人々~」(ティナルディエ 役)、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』5~鉄路にラブソングを~(上越線 役)など。現在、ドラマ「ワカコ酒 Season7」に青柳 役で出演中。2023年10月4日より、「ハンサム落語2023」への出演を控える。Twitter
アンサンブルはもちろん、メインキャストもお馴染みの顔ぶれから、久しぶりのキャラクターまで登場。オールキャスト、という感じですね。
鎌苅:今回はマイクロフトも登場するからね。
平野:Op.2以来ですよ!
鎌苅:マイクロフトも帰ってくるし、ミス・ハドソンの(七木)奏音ちゃんも出られるし。勢揃いだね。
平野:せしさん(大湖せしる)、喜んでるんだろうな〜。
鎌苅:喜んでるんだろうな〜!
平野:「あたし最後かもしれない!」ってOp.3の時に散々言ってたのに(笑)。
鎌苅:本当に(笑)。わ〜楽しみだな!
平野:僕ら自身もどんな景色が待っているのか楽しみに、稽古と本番を頑張りたいと思います!
information
ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.5 -最後の事件-
【日程】2023年8月24日(木)~8月27日(日)
【会場】大阪・メルパルクホール
【日程】9月1日(金)~9月10日(日)
【会場】東京・天王洲 銀河劇場
【原作】構成/竹内良輔 漫画/三好 輝『憂国のモリアーティ』(集英社「ジャンプ SQ.」連載)
【脚本・演出】西森英行
【音楽】ただすけ
【出演】
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ 役:鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ 役:平野 良
アルバート・ジェームズ・モリアーティ 役:久保田秀敏
ルイス・ジェームズ・モリアーティ 役:山本一慶
セバスチャン・モラン 役:井澤勇貴
フレッド・ポーロック 役:長江崚行
ジェームズ・ボンド 役:大湖せしる
ジョン・H・ワトソン 役:鎌苅健太
ミス・ハドソン:七木奏音
ジョージ・レストレード 役:髙木 俊
マイクロフト・ホームズ 役:根本正勝
伊地華鈴、大澤信児、木村優希、熊田愛里、柴野 瞭、白崎誠也、高間淳平、竹内一喜、永咲友梨、中村祐輔、蓮井佑麻、山下真人
【Piano】境田桃子
【Violin】林 周雅
【チケット】
公式サイト
【配信】
8月24日(木)18:00初日公演(スイッチング映像/全景映像※アーカイブ配信のみ)
9月10日(日)12:00公演(全景映像)/17:00千秋楽公演(スイッチング映像)
公式サイト
www.marv.jp/special/moriarty
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※応募締切:2023年9月10日(日)23:59まで
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credit
テキスト:田中莉奈
撮影:田代大樹
©竹内良輔・三好 輝/集英社 ©ミュージカル『憂国のモリアーティ』プロジェクト