大人気ゲーム『薄桜鬼』を原作としたミュージカル『薄桜鬼』 は、2022年4月27日に行われたミュージカル『薄桜鬼 真改』斎藤一 篇 の東京公演最終日に10周年を迎えた。
それを記念し、ライブコンサート形式で行われる「HAKU-MYU LIVE 3」の開催が決定!
シリーズを通して人気を博する本作にずっと出演したいと願い、ついに「真改 斎藤一 篇」でその場所にたどり着いた北村健人に、インタビューを実施した。
大好きな作品で最も好きな人物である沖田総司を演じて感じた思い、そして初参加となる「HAKU-MYU LIVE」への期待感を語ってもらった。
interview
大好きなミュージカル『薄桜鬼』本公演への出演、そして今回は初めて「HAKU-MYU LIVE」にも参加です。まずは、本公演参加の振り返りからお願いします。
北村:僕、この作品がめちゃめちゃ好きだったんです。ずーっと出たいなと思っていました。稽古には冷静に臨めたんですけど、初日を迎えるに当たってワクワクが止まらなくて! 念願だった作品の初日公演って人生で一回しかないわけじゃないですか。普段からあまり緊張しないタイプなんですけど、あの時ばかりは緊張していました。
出演した「真改 斎藤一 篇」で初めてセリフを喋るのが沖田だったんです。そこへ土方さんが出てきてからのオープニング、そして暗転になる流れだったんですけど。その暗転の瞬間と、「雪風華」の前奏が流れ出した瞬間にすごくこみ上げてくるものがありました。舞台袖で、僕と同じく初参加だった(雪村)千鶴役のいっちゃん(牧浦乙葵)と「『薄ミュ』デビューしたね」っていう話もして。改めてこの歴史ある作品に出演させていただけることの幸せを噛み締めました。
しかもこの10周年という特別なタイミングでのご参加でしたもんね。
北村:そうですね。公演が終わってから(橋本)祥平とも語り合ったんですけど、祥平は「斎藤一 篇」をやることが夢だったと言っていて、僕もミュージカル『薄桜鬼』に出るのが夢だったっていうのをお互いに話して。「お互いの夢が叶った瞬間だったね」って話しながら、この作品にはこうしていろんな人の夢が詰まっているんだなと思いました。
参加したからこそ改めて感じた『薄桜鬼』の魅力は?
北村:新選組という場所にみんなが居るところからスタートしているけど、それぞれが追い求める夢や目標、使命によってバラバラになっていく切なさや、時代に飲み込まれて敗者となっていくもどかしさがあるんですよね。そしてそれがフィクションではなくて本当にあった物語だからこそ、リアリティーを持って自分自身も迫っていける。かっこいいだけじゃない、人間の物語を描いているところがこの作品の魅力だと思っています。
演出の西田大輔さんからは沖田を演じるに当たってどういうディレクションを受けたのですか?
北村:あんまりこれは言いたくないんですけど……。僕はこの役が好きなあまり大切にしすぎているところがあるんです。基本的にどの役を演じるにおいても僕は自分自身がゼロに近ければ近いほど役に近づけると思っているし、それが美学だと思っているんです。だから演じるに当たって“自分らしさ”とか“北村健人っぽさ”はいらないと思って役と向き合わせてもらっているんですけど。
でも西田さんはとても人を愛してくださる方なので、稽古スタート当初に芝居を見ていただいた時には「雰囲気があっていいね!」と言ってくださった上で、終盤には「健人はすごく真面目で、稽古中の立ち振る舞いを見ていても本当に芝居に対して誠実なのは分かるんだけど、もっと健人自身を出してもいいと思う」という風に言ってくださって。
それからはバランスを見極めつつですが、「出してもいいんだ」と考えるようになりました。これまで自分を出さないことにフラストレーションを感じていたわけじゃないですが、出してもいいのかなと思えるきっかけの言葉になりました。自分の美学は変わらないけど、西田さんの言葉によって「真改 斎藤一 篇」の沖田を作ることができたのかなと思っています。
そして、こんな風に大人になってから夢を叶えるってなかなかできることじゃないし、7年越しの夢となるとさらに特別な思いがあって。沖田は「願ってそのために頑張っていれば夢は叶うんだよ」と教えてくれた役だと思います。
『薄ミュ』カンパニーは改めてどんな場所でしたか?
北村:自分たちを決して否定せず、それぞれに伸ばそうとしてくださる西田さん、そして作品の長い歴史を背負ってきた(鈴木)勝吾くんと井俣(太良)さんがいらっしゃって。そしてみんなを俯瞰で見て支えてくれる輝馬くんの存在があって。本当にバランスの取れたカンパニーだなと思いました。
座長の祥平は僕には想像もできないような大きなものを背負ってこの作品に臨んでいることが口を開かずとも伝わってくるような立ち振る舞いを稽古中からしていて、同い年ながら尊敬してますし、ご一緒できて本当に良かったなと思っています。これまでもそうでしたけど、より舞台が好きになるようなカンパニーであり作品でした。
初参加のカンパニーでしたが、皆さんとはすぐ打ち解けられましたか?
北村:本当に素敵な皆さんに迎え入れてもらえたからこそ、すぐにカンパニーの一員として馴染むことができました。特に輝馬くんはすごく気に掛けてくれました。原田左之助 役の川上将大も。彼は同い年なんですけど、初日公演が始まる前に「薄桜鬼の初日のオープニングはマジでやばいよ」と舞台袖で言ってくれて。自分の中でもすでに興奮していたんですけど、その一言でさらにアガったのを感じました。
公演が終わった後に「マジでやばかったわ!」って報告したら「そうでしょ。初参加の健人の姿を見ていて、自分が初参加した頃をよく思い出したわ」って言われて、将大もこの作品に対しての思いがすごく強いんだなと改めて感じましたね。
『薄ミュ』カンパニーは、皆さん本当に作品愛が強くて、並々ならぬ思いで挑んでいらっしゃるなと感じます。
北村:すごいですよね。僕もまだ初参加で一作のみの経験で、そこで見えた部分もありますけど、きっとこの先も続けていくことで見えてくる部分もあると思うので、この作品の魅力をこれからも探求していきたいと思います。
そして「HAKU-MYU LIVE」は今回が第3弾の開催、第2弾の公演から6年ぶりの開催となるイベントです。北村さんは初参加ですが、事前に共演者の方から頂いた情報はありますか?
北村:今のカンパニーでライブを経験されている方が祥平と井俣さんしかいないみたいなんです。井俣さんに「どんなイベントですか?」と聞くと、キラキラした目で「歓声が気持ちいいぜ!」と言っていました(笑)。
歌っている時に舞台上でそういう感覚になったことは?
北村:少し違うかもしれませんが……。「雪風華」のラスサビに行く前……台上の上手から僕が、下手から藤堂平助 役の樋口裕太が出てくるところがありまして。中央に立っている二人が後ろを向くという動きがあったんですけど、そこで毎回裕太と目が合うんですよ。役としては「新選組としてこれから狼煙を上げてやろうぜ」みたいな気持ちが互いにあって、自分たちとしても「オープニングだからここでお客さんの気持ちを掴んで感動させようぜ、かましてやろうぜ」っていう気持ちがある。そういういろんな思いが重なって、裕太と目が合う瞬間は視線だけで伝わるものがあるんです。だからきっとライブ公演はそういうものの連続なんだろうなと思っています。
それは二人で示し合わせず、最初から目が合っていたんですか?
北村:そうなんです。稽古中、その動きがついた瞬間から裕太も僕の方を見てて、僕も裕太を見ていて。バチッと目が合ったんですよね。それで後ろを振り向くときにはもう、出てき始めた時より一段階も二段階も感情が昂ぶっていたのを覚えています。
樋口さんとの絆も大きいですね。
北村:裕太ってすごく素敵な役者さんで。稽古始まりたてのタイミングって割とみんな「自分の役はこうありたい」という風に内向きにベクトルが向くことが多いんですけど、裕太は稽古序盤からすでに外側にベクトルが向いていて。さりげなく肩をポンッと触ったり、絡みにいけるというか、そういう作り方をする人なので。だからすごく動きが出やすいし、僕自身そこからもらえるものが多くて。ライブは彼自身が得意とするフィールドでもあると思うので、またもらえるものが多いんだろうなと思っています。
“ライブ”となるといつもと構え方が変わったりしますか?
北村:経験があんまりないので、難しいですね。でも例えば歌やダンス、殺陣もそうですけど、そこには役としての感情が乗っていて芝居として作っていますよね。でもライブは“楽しませる”とか“魅せる”というのが第一目標だと思うんです。
本来、芝居だったら「この殺陣を受けるならこの角度だよね」と考えるけど、「ライブだったらこっちの方がかっこいいよね」といった風に“魅せる方”に振って作る部分もあるのかなって思うんです。あくまで予想の範囲内ですけど……そういう作り方の違いはあるのかなと。
初参加の方も多い「HAKU-MYU LIVE」ですが、そこはやっぱり近藤 勇 役の井俣さんがどっしりと構えてくれて、みんなを引っ張ってくれそうですか?
北村:はい! でも何よりやっぱりあのキラキラしたお顔を見たいんで、僕はそれが見られればいいかな(笑)。
北村さんのブログを読ませていただいたら、井俣さんの存在が北村さんにとってすごく大きいんだなと感じました。
北村:ありがとうございます。おっしゃる通り、本当に大きな存在ですね。僕は井俣さんのおかげで沖田総司になれたと思っているので。ご本人には言ってないですけど。ホント、好きですね。いつでも“繋がってる”みたいな感じがするんです。
井俣さんは兄弟のような関係性を築ける人? それとも師匠みたいな感じですか?
北村:いや……そんなかっこいいものじゃないと思います(笑)。なんでしょうね。愛すべきいじられキャラなんですけど、裏でどれだけいじられていてもやっぱり、舞台上でみんなに対してパキッとセリフを言うシーンは井俣さんにしか作れない緊張感や雰囲気があって。
僕は7年前に観させていただいた時から、“『薄ミュ』と言えば井俣さん”という部分があると思っています。
今回の「HAKU-MYU LIVE」出演キャストの中には、同じく沖田役を演じられた菊池修司さんも参加されますが、なかなかこうして同じ役のキャストが同じ舞台に登壇することはないと思います。沖田役がもう一人いるというのはどういう感覚ですか?
北村:修司とは古くからの仲なんです。そういう意味ではこういう共演の形がすごく楽しみですね。多分僕と修司って全然タイプが違うと思うんですけど、その二人が同じ役を演じているというのがすごく面白いなと思いますし。
多分お客さんも「え!? どういう感じになるの?」と思ってはいると思うので、そこを逆手に取っていきたいな。“二人いるからこそのもの”みたいなものを出していけたら面白いんじゃないかなと思います。
千鶴も3人いますもんね。
北村:それが楽しみですよねぇ。『薄桜鬼』の世界からしたら、千鶴が3人いるってもう……幸せでしかない(笑)。そこも含めて、ライブ公演ならではのものをお届けできたらなと思っています。
でも本当に、役者をやっていてZepp(ライブハウス)に立てる機会ってなかなかないと思うので、純粋に楽しみな気持ちがいっぱいなんです。
個人的に「HAKU-MYU LIVE」でこんなことがやりたいと思うことはありますか?
北村:僕、踊ることが好きなんです。公演で踊ったのは「雪風華」だけだったので、踊るナンバーが増えたら嬉しいなと思います。僕は「真改 斎藤一 篇」で「黒猫」をソロで歌ったんですけど、「HAKU-MYU LIVE」ではコンテンポラリーダンスとかを踊りながら歌っても面白いかもしれないですね。お客さんは驚いてしまうかもしれないけど(笑)。
お客様にはどういうところを一番楽しみにしていてほしいですか? 決まっていない部分も多いと思いますが(※取材時)、個人的に観てほしいポイントなどあれば教えてください。
北村:「真改 斎藤一 篇」では「池田屋事件」以降、労咳を発症してみるみる弱っていく沖田の姿を描いていたので、きっとお客様にとって沖田は病気に苦しめられて弱っていく姿が印象深いと思うんです。ライブをどういう形でお送りすることになるかは分からないけど、沖田の労咳だけでなく新選組が抱えているものや悲しいこと、そういったものを一旦置いておいて、それぞれのキャラクターが幸せを感じて輝いてる姿を観れる瞬間がきっとたくさんあると思います。
僕自身そういう瞬間があることが楽しみだし、沖田を演じる役者として“労咳のない世界線の沖田”を演じ、それをお客さんに届けられたら……。悲しい姿のまま句読点が押されて終わっている姿から、素敵な瞬間を思い出として上乗りできるのかなと思っています。
沖田はとにかく辛いシーンが続きましたもんね。元気な姿も、ぜひ拝見したいです!
北村:僕、公演が終わっても1カ月くらい咳が止まらなくて(笑)。人って空咳をしすぎると慢性的になるのかもしれないなぁと。稽古中も家で台本を読みながら、自分ができる一番生々しい咳ってどれだろうと思って、毎日いろんなパターンでゴホンゴホンやっていたんです。そしたら止まらなくなっちゃったという……今だから言える話もありますが(笑)。
なのでそういうことも忘れて、飛び跳ねたりして元気な姿をお見せできたらなと思っています。皆さんぜひ、そこも楽しみにお越しいただけたら嬉しいです!
information
ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE 3
【日程】2022年10月29日(土)、30日(日)
【会場】大阪・Zepp Namba(OSAKA)
【日程】11月11日(金)~13日(日)
【会場】東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
【原作】オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)
【構成】西田大輔
【音楽】佐橋俊彦、坂部 剛
【作詞】毛利亘宏、西田大輔
【出演】
久保田秀敏、北村健人・菊池修司、橋本祥平・大海将一郎
樋口裕太、川上将大、小池亮介、輝馬、椎名鯛造、砂川脩弥
井俣太良/
牧浦乙葵・松崎莉沙・本西彩希帆(東京公演のみ)/
横山真史、末野卓磨、川本裕之/
中河内雅貴・佐々木喜英(東京公演のみ)/
アンサンブル:坂本和基、菅野 充、安久真修、竹井弘樹、丸山武蔵、山口 渓
www.marv.jp/special/m-hakuoki
Twitter
credit
テキスト:田中莉奈
©アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会