林 海象による映画『私立探偵 濱マイク』シリーズの第1弾「我が人生最悪の時」を原作に、西田大輔が脚本・演出を手がける舞台作品が東京・サンシャイン劇場にて上演中。
佐藤は昨年上演された朗読劇版に続き濱マイク役を務める。本誌『Sparkle vol.51』より一足先に、舞台版への思いを語ってもらったインタビューを公開する。
interview
前回の朗読劇を振り返りつつ、今回の舞台版だからこそ叶えられそうなことなど、佐藤さんのビジョンを教えてください。
佐藤:まず、しっかりとアクションができるなと。朗読劇の時は当たり前ですけど手に台本を持っている状態でやっているので、いわゆるアクションシーンについてはお客様の想像にお任せする感じでやってたんです。今回はより臨場感を持って、アクションを展開してその場面をお伝えできるので、その変化は大きいと思いますね。
朗読劇の時にキャストの皆さんが椅子から立ち上がって動いているのを見て、演者さんたちもウズウズしているのかなと思った記憶があります。
佐藤:そうですね。そのくらい、変な意味じゃなく“朗読劇っぽくない作品”だったなと思って。だから勝手に身体も動いちゃうというか。そんな作品だったからこそ、改めて舞台化する意味があるし、今回の公演が舞台でやる『濵マイク』の完成形により近い気がするなと。
朗読劇は3、4日くらいの稽古期間でしたし、今よりかなりコロナの状況も厳しくて、本番までみんなの顔も見れず……みたいな感じだったんですよ。パーテーションとマスクで相手の声が満足に聴こえないという環境下で稽古していたから、そういった意味でも今回はより深いところに行けそうな気がしています。
朗読劇からの続投キャストには、星野役の矢部昌輝さんもいらっしゃいます。ミュージカル『ジェイミー』でのWキャストも経て、矢部さんとはより仲良くなれたのでは?
佐藤:確かに。ただ『ジェイミー』では矢部ちゃんはWキャストということもあり、本番中は会えなかったので。でも……そうですね、考えてみると矢部ちゃんとの付き合いも長くなってきましたね。彼ってものすごい器用な人なんですよね。朗読劇での矢部ちゃんの星野くん、めちゃくちゃ面白かったから(笑)。
公演替わりのアドリブで、佐藤さんがめちゃくちゃイジっていた印象があるのですが(笑)。
佐藤:確かにめちゃくちゃイジってましたねぇ(笑)。はははは! 思い出した。彼が「モノマネとかやるんです」みたいなことを自分から言ってきたんですよ。で、「本編中、絶対にそのイジりやめてくださいね!」みたいなフリをしてくるんですよ、ちゃんと(笑)。あ~そんなにモノマネしたいんだ、と思って。
それはもう、振ってくれたからには応えるよという気持ちで?
佐藤:そうなんですよ。「絶対やめてくださいね!」ってウキウキした顔で言ってくるから。
いわゆる「押すなよ!」の法則ですね(笑)。
佐藤:完全に「押すなよ!」のやつで(笑)。なんか、DISH//の時も色々やっているらしいですね。だから(ミュージカル『ジェイミー』の)ディーン役を彼がやるって聞いて、逆にびっくりしましたよ。矢部ちゃんのパーソナルにディーンが持っているような一面があるのかな、とか。
矢部さんの演じるディーンは、佐藤さんとは対極な面もありましたよね。
佐藤:そうですね。良い意味で全く別物になったと思います。
では今回も星野をイジっていこうという気持ちは強いですか?
佐藤:前回は朗読劇ならではのイジり方だった気がするので、舞台は舞台として固くやっていきたい気はしていますね。
今作で脚本・演出を手掛ける西田大輔さんの舞台作品も、どこかでそういう振りやイジりの時間があるイメージです。
佐藤:じゃあやるしかない(笑)。そういうシーンが台本上用意されていたらしょうがないですね。
前回の朗読劇版を経て、改めて映画版も観たということもあり「濱マイク」という役への理解はより深まっていると思います。改めて、この濱マイクという人物をどう捉えていますか?
佐藤:俺の親父に近い人間だと思っているんですよ。男らしくて、表面上じゃないところに優しさがあるというか、深いところでずっと繋がっている感じが、父親と似てるなって感じますね。
では演じるに当たってはお父様を意識しながら、その面影みたいなものを自分にたぐり寄せていく?
佐藤:でも、俺も親父とほとんど一緒なので、ほぼ性格これなんですよね。なのであんまり役作りがいらない役だなと思っているんです。
めちゃくちゃ固い役作りをしていかなきゃいけないこともあるんですけど、濱マイクに関しては想像しうる通りのお芝居で間違いはないんじゃないかって感じていて。原作もありますけど、いわゆる原作モノを模倣していくとかそういうことじゃないというか。自分らしく演じられればいいかなと思っていますね。
朗読劇版とはきっと別物になるのだろうと思いますが、その経験がありつつも、佐藤さん自身ゼロからまたスタートしていく心境ですか?
佐藤:何もかもが違いますからね。きっと台本を持たずに歩いてみるだけでも変わるだろうし。楊(海平)役をテラ(寺西拓人)くんが演じることで本当にガラッと変わると思うし。楊との関係性もこの作品の魅力の一つだと思うので、しっかり作っていきたいですね。
今回の舞台版では、序盤で濱マイクの指が取れるモーションを、全身で演じている姿が観られますね。
佐藤:あ、そうですね。指が取れるシーンはきっと今回もあるでしょうから、ちゃんと着脱可能にしておかないと(笑)。
ガンアクションもあるだろうし、今回なんといっても(椎名)鯛造くんもいらっしゃいますから。ガッツリとアクションが入るんだろうなと思うとすごく楽しみですね。
舞台『私立探偵 濱マイク -我が人生最悪の時-』は「舞台化したい」というご自身の気持ちを叶えた作品でもありますので、どんな姿勢で稽古と本番に挑まれるかを、最後に教えていただけますでしょうか。
佐藤:いつも通り、ですね。粛々と自分の役割を考えて、他の人にはできない芝居を見せていくこと……それに尽きます。『濱マイク』という自分らしく演じられる作品をやることで、“自分が演じている意味”みたいなものにも改めて向き合っていけたらと思っています。そして日々一歩ずつ前進できるよう、学び続けたいと思います。
information
舞台『私立探偵 濱マイク -我が人生最悪の時-THE MOST TERRIBLE TIME IN MY LIFE』
【日程】2022年12月15日(木)~12月18日(日)
【会場】東京・サンシャイン劇場
【日程】12月29日(木)、30日(金)
【会場】大阪・森ノ宮ピロティホール
【原作】林 海象
【演出・脚本】西田大輔
【出演】
濱マイク 役:佐藤流司
楊 海平 役:寺西拓人
星野 役:矢部昌暉/宮本弘佑(Wキャスト)
楊 徳健 役:椎名鯛造
濱 茜 役:小泉萌香
王 百蘭 役:七木奏音
中山刑事 役:和興
他
【チケット】
公演オフィシャルサイト
hamamike-stage.com
Twitter
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佐藤流司 掲載
『Sparkle vol.51』2022年12月22日発売
内容:W表紙+本文13ページ(インタビュー+コラム&撮り下ろしグラビア)
+巻末綴じ込み付録:佐藤流司ツヤツヤ厚紙ピンナップ
credit
テキスト:田中莉奈
©林海象/舞台『私立探偵 濱マイク』製作委員会