2.5次元作品を中心に活躍を続けながら、「オリジナル作品を作りたい」と熱望し続けた人々の想いが集結して、2022年秋、新作舞台「オビリビオの翼」が誕生する。
その中心に立つ北村 諒に今作への想いを聞くと、オリジナル作品の楽しみ方をレクチャーしてくれた。元天使、遺品回収、忘却、切なさ、人との関わり、生々しさ……作品のキーワードから、まだ見ぬ世界の扉が少しずつ開く。
発売中の『Sparkle vol.49』にも同時掲載のインタビューを、誌面とは異なるグラビアと共に、「Sparkle web」では完全版としてたっぷりとお届けします。
interview
舞台「オブリビオの翼」はどんな経緯で誕生するのでしょうか?
北村:以前からプロデューサーの辻(圭介)さんと「オリジナル作品をやりたいね」とお話ししていて、タイミングが合い今回やれることになりました。脚本・演出は毛利(亘宏)さんに決まって、ここまでゼロから創ることができる機会はなかなか無いので、すごく嬉しく、楽しみな気持ちが強いです。
辻さんとは気兼ねなく色々な意見を言い合える仲でもあるので、そういう意味では自由度が高いのかなと思います。創っていく過程でもフレキシブルにできそうなので、本当に突き詰めれば突き詰めるだけ迷うだろうし、いい作品になるであろう可能性が秘められていると思います。
北村さんは2.5次元作品など、原作がある作品に出演されることが多いですよね。
北村:原作がある作品は、お客さんも役やストーリーを想像できるじゃないですか。でもオリジナルは知識が無い状態で入るから、驚かせたいです。観た時に「え、そんな役なの?」みたいな、そういう驚きがあったら面白いなと思ったんです。
自分が演じる上での面白さというより、観客視点での面白さですね。
北村:そうですね。どちらもありそうだなと思います。
何か具体的な希望は話していたんですか?
北村:最初はすごくゲスい役がやりたいと言ったりしていました。キラキラしていない役がやりたかったんですよね。でも今回は“ゲスい”とは違う役になりましたね(笑)。
北村さん演じるルカの“元・天使”という設定はどう思われましたか?
北村:“元”というところが、わりとポイントなのかなと思います。現役の天使だったらストレートで分かりやすいですが、“元”がつくと、「なぜ“元・天使”なのか」「なぜ天使をやめたのか」、“現役天使”との関わり方だとか、広がりがあると思うので楽しみですね。脚本には関わっていないので、どんな本ができあがるのか楽しみにしています。
現時点でご存じの物語の内容についてはいかがですか?
北村:起承転結が予想できないので、まだ皆さんと一緒でドキドキしている状態です。設定は凝っていて、意味深ですよね。探偵っぽい感じなのかなと。
作品のテーマが「忘却:忘れないでほしい思いがある」とのことですが、このテーマからどんなことを考えましたか?
北村:僕はめちゃくちゃ物忘れするタイプなんです。すぐ忘れてしまうので、覚えていられる人はすごいなと思います。でも、“忘れられる”のは悲しいことじゃないですか。だから、わりと切ないテーマですよね。
昔ゲームをやっていて、キャラクターが忘れ去られてしまう話を見ていると、やはり切ないなと思ったりしました。きっと観に来てくださるお客さんも、誰しも忘れていることは何かしらあると思うんです。心のどこかに引っかかったり、刺さったりするテーマなのではないかなと思います。
その一方で、天使は“覚えていてくれている”設定のようですね。
北村:天使は幸福を願って見守るのが仕事ですが、「それだけ!? 天使めちゃくちゃ楽やん!」って思いました(笑)。でも、そうして何もしないで生きているのはしんどいと思うんですよね。「オブリビオの翼」とは関係ない作品ですが、「何もしない人生はゆるやかな死と同じだ」みたいな、めちゃくちゃ好きなセリフがあって、今回もそれに通ずるものがあると思います。
自分自身としても一日一日を精一杯生きたいし、そういう思いは皆さんにもあるだろうなと思います。何かをできたり、仕事や趣味があったりすることはすごく幸せなことだと、この数年で改めて感じました。やれることがあるのは幸せで、それこそ舞台を創ることができるのもそうです。その感謝を忘れずに創れたらいいなと思いますね。
北村さんが演じるのは“元・天使”なので、見守るだけにはならなそうですが、北村さんご自身は人と積極的に関わりたいタイプですか?
北村:今はそう思います。昔は、できるだけ関わらなくていいと思っていたんですが、それこそ役者を始めてから人との関わりがすごく大切で、かけがえのないものなんだなということに気付けました。
特に舞台をやっていると、1カ月、2カ月と一緒にいる期間が長くて絆も深まるので、人と関わることはこんなにいいものなんだと思いました。得るものも多いですし、後輩がいたら自分のアウトプットも大事になる。そういうことに仕事を通して気付くことができました。だから、今は大切に思っています。
では、この元・天使も“関わる”という点では。
北村:リンクできそうだなという部分はありますね。
毛利さんとはこれまで何作品もご一緒されていますが、オリジナルを共につくることについてはどんなお気持ちですか?
北村:毛利さんは多分人間味を描くのが得意というか、好きな方だと思うので、テーマは天使ですが、そういう意味では生々しいものを描いてくれるのかなと期待しています。
演出面ではいかがですか?
北村:毛利さんに「きたむーは“人外の役”が似合う」と言われたことがあります(笑)。「浮世離れした雰囲気が似合う」と。毛利さんと一緒にやっている作品は、ここまで全部“人外”なんです。これまでの役は“人形”と“神様”だったので、「今回は天使か!」と思いましたね(笑)。
今回も、ある意味人間離れしているキャラクターですが、多分考え方や心など中身は人間らしいのかなと思っているので、そこを毛利さんがどう演出してくれるのか楽しみですし、稽古をしながら一緒に話していけたらと思います。
共演の方のお話も伺いたいのですが、まずW主演の仲田博喜さんの印象はいかがですか?
北村:久しぶりの共演になりますね。舞台「真・三國無双」以来、2回目の共演です。博喜に会った時に「きたむー主演でしょ。俺も出るよ」と言われて、「マジで? 俺主演だったのか」と、その時まですっかり主演ということを忘れていたんです(笑)。「きたむーが主演だから受けたよ」と言ってくれて、すごく嬉しかったですね。
前回も共演はしましたが、そんなに絡んではいなくて。今回はがっつりと絡める役なので、掛け合いがとても楽しみです。
仲田さんのお芝居の印象はいかがですか?
北村:真っすぐ、真面目なお芝居をする人だなという印象です。博喜の役も結構クセが強そうなキャラクターなので、どういうバランスでつくるのかなと。まだイメージはついていませんね。
ビジュアル撮影時は、どんなことをお話しされましたか?
北村:あの時はキャラクタービジュアルと、キャラの設定くらいしかまだ知らなかったので、何も話していないです。とにかく寒かったくらいで、嵐のように過ぎ去った撮影でした(笑)。
今作では先に桜日梯子さんのキャラクターデザインがあって、そのビジュアルを表現されたということです。これまでにも色々な作品でさまざまなビジュアルを表現されてきましたが、今回のビジュアルはいかがでしたか?
北村:個人的に好きなビジュアルだなと思いました。あの長さの金髪や、白いもこもこしたコートを着たりするなど、ああいうタイプは意外と今まで無かったので、すごく新鮮でした。お芝居自体もキャラクターのイメージのように、僕と博喜のコントラストが出たらいいなと思っています。
他の共演者についても伺わせてください。谷口賢志さんはどのような印象ですか?
北村:賢志さんがいると安心感がありますね。舞台「真・三國無双」やTXT vol.1「SLANG」など何作品もご一緒していますが、僕の中では地面を固めてくれる存在だと思っているので、いてくれるだけで安心感があります。賢志さんがいると、本当にスムーズに進みます。
稽古がスムーズに進むということですか?
北村:例えば、脚本や芝居稽古をしていて、「ここは少し気持ちが繋がらないな」「どうしようか」というときに賢志さんが的確な意見をすぐに言ってくれるんです。「ここはこうした方がいいんじゃない?」とか演出家さんに聞いてくれたりして、すごくスムーズに進んだ記憶がありますね。だから、もう全部賢志さんが言ってくれます。
現場になくてはならない存在?
北村:頼りがいのある兄貴なので、嬉しいですね。
川隅美慎さん、中村太郎さんはいかがですか?
北村:美慎とは体内活劇「はたらく細胞」Ⅱや「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stageシリーズなどで共演していますが、芝居に対して熱い人なので、一緒にお芝居をしていて楽しいです。また共演することができて嬉しいです。特に今回はオリジナルなので、その芝居心がきっといい方向に働くのではと思っています。稽古場や作品の熱気が一つ上がりそうだなと。
北村:太郎は初共演ですが、たまにオンラインゲームを一緒にやるんです。仲間内でゲームをする時に太郎もいたりして、ずっと太郎に「あ、すみません」と言っています(笑)。「中村さん、よろしくお願いします。頑張ります」と下手に出ると、「本当にやめてください」と言われます(笑)。
中村さんはイジられキャラなんですね。
北村:やっと共演できるので、今回もきちんと下手に出て、僕は中村さんの下について頑張りたいなと思います(笑)。
中村さんは現役の天使役ですね。元・天使の北村さんとはとても関わりがありそうです。
北村:これはギクシャクしそうな(笑)。
(笑)。他の皆さんはいかがですか?
北村:もう“安心感の塊”みたいな人たちですね。受け止めてくださる方たちがたくさんいるので、どんなスタートを切っても、どこに行っても大丈夫という布陣ですね。
ゼロからオリジナルを作るのにぴったりですね。
北村:僕と博喜がのびのびとできますね。
他に今作品で楽しみにしていることはありますか?
北村:オリジナルだと本当に驚きや意外性、お客さんがワクワクする要素を作ることができると思うので、そこが楽しみですね。これから少しずつ情報を開示していきますが、いくら情報を出したとはいえ、全部のストーリーを知ることはできないわけですから。
原作がある作品だと、展開が分かった状態で観ることもあると思います。もちろんそれも面白いですし、展開を知っていても別の角度から観る楽しみ方もあると思いますが、「この後はどうなるの?」という楽しみ方ができるのはオリジナルの強みだと思うので。そこは突き詰めて、なんとなくでやらないように、毛利さんや共演者のみんなとしっかり作り上げていきたいです。
オリジナル作品を観慣れていないお客様に、この作品をどう楽しんでいただきたいか、お伝えしたいことはありますか?
北村:観に来ないと分からないよ、とお伝えしたいです。それはどんな作品にも言えることだと思いますが、映画とかとはまた違いますから。
演劇である以上、やはり劇場で生で観ることには大きな意味がある。それが一番の醍醐味だと思います。目と耳だけでなく、体で感じられるのが演劇のいいところ。それを楽しんでほしいので、ぜひ劇場で体感してほしいと思います。あの空間を共有できるというのはそこにしか無い体験で、DVDやブルーレイ化されてから観るのとはまた別物ですから。やはりライブ感を知ってほしいなという気持ちです。
information
舞台「オブリビオの翼」
【日程】2022年9月23日(金・祝)〜9月25日(日)
【会場】大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
【日程】10月4日(火)〜10月8日(土)
【会場】東京・シアター1010
【脚本・演出】毛利亘宏(少年社中)
【メインキャラクターデザイン】桜日梯子
【出演】
北村 諒、仲田博喜/
川隅美慎、中村太郎、北村健人、須永風汰、廿浦裕介、戸舘大河/
髙木 俊、増田裕生/谷口賢志
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北村 諒掲載
『Sparkle vol.49』発売中
内容:【北村 諒×橋本祥平(劇団『ドラマティカ』ACT2/Phantom and Invisible Resonance)】
本文7ページ(対談+ミニ対談+コラム&撮り下ろしグラビア)
+巻末綴じ込み付録:北村 諒×橋本祥平ツヤツヤ厚紙2shotピンナップ
【北村 諒(舞台「オブリビオの翼」)】
本文2ページ(インタビュー&撮り下ろしグラビア)
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テキスト・撮影:岩村美佳