100万ダウンロード突破の人気アプリゲーム『夢職人と忘れじの黒い妖精』(以下、『ゆめくろ』)初のメディアミックスとなる、舞台『夢職人と忘れじの黒い妖精』が東京・シアターHにて上演中だ(2024年8月12日(月・休)まで)。
『ゆめくろ』は様々な職業で活躍する職人=マイスターたちと共に、世界を巡り夢を追いかけるファンタジーRPG。個性豊かなキャラクターたちが織りなす魅力的なストーリーが、西田大輔の演出による迫力満点のアクション、TAKAの手掛ける音楽に乗せた歌唱やダンスにより舞台上に華々しく展開される。
「Sparkle web」では本作で主演を務めるクロウ 役の武子直輝に、開幕前のタイミングでインタビューを敢行。
座長として心掛けていることや、2.5次元舞台作品に出演することへの意識の変化など、役者・武子直輝の思考回路が垣間見える取材となった。
interview
本作にて武子さんは主演を務められるということで、主演としての意気込みや、座長として普段から意識されていることなどはありますか?
武子:うーん、無いです! 「無いです」って言ったらあれですけど(笑)。実は20代の半ばからちょっと過ぎた頃の辺りが一番尖ってた時期で、後輩がちょっとダラしなかったりすると、「良くないよ」とか言っちゃってたんですよ。でも、ただ言えばいいってものじゃないのかな?って、そういう行動をちょっと見直したりとかして。僕自分が真ん中に立って、ダメなものに対して強く「ダメ」って言ってしまったら、そこで終わっちゃうんですよね。まず、そもそも僕は演出家じゃないので、僕に言う権利なんて1ミリも無いですし。僕にとっても言って得られるメリットが一つも無いってことに気付いてしまったんです。
優しさだって時には相手を立ち直らせる道具になるんですよね。それに気付いてからはあんまりイラッとすることが無くなったというか、その分みんなで協力して頑張っていこうという意識が強くなったと思います。真ん中に立つ人間として、生き方も含めてお手本にならなきゃいけないと思うし。「この人が主演だったら安心して背中を預けられるな」って思ってもらえるようにするには、やっぱり仕事場では完璧な姿勢を見せなきゃいけない。プライベートはその分、体たらくかもしれないですけど(笑)。なので座長としては別に何も言わないです。
そういった意識の変化には何かきっかけがあったのですか?
武子:ありました。コロナ禍に入った時に、芝居の感覚すらも全部変わったんです。仕事をできる状況でもなかったですし、ただただ時間だけがある中で「今、自分は何を目指しているんだろう」とか色々と考えさせられたというか。今までは仕事をめちゃくちゃ詰め込みまくっていたりして、自分のことを見つめ直す時間なんか無かったんですよね。でも見つめ直してみたら芝居に対するスタンスというか、芝居自体が変わりました。見せ方とか、芝居に関するもの全てにこだわりを持つようになったりして、それがすごく楽しかったんです。
それまでは稽古も「楽しい」というよりは、どっちかというと〝本番に向けてやるもの〟ってぐらいの気持ちだった。もちろん真剣には取り組んでいたんですけど、がむしゃらというか、あんまり考えずにただただ熱量100%で挑み続けていたのかなと。でも今の自分は稽古にすごく面白さを感じていて。「こんなことやってみよう、あんなことしてみよう。だって稽古だし、怒られてもいいじゃん」って。挑戦できる場があるってすごく素敵なことなんだなって改めて気付けた気がします。本番までに何回でも試すことができる稽古の期間が、今は一番楽しいです。そしてその稽古期間を通していかに本番に期待値を上回るものを持ってこれるか、お客様が思いっ切り楽しめる時間を作れるか。いかに稽古を充実させられるかどうかで、本番でのお客様の見る目が変わってくるような気がしています。
そういったスタンスで稽古に臨むと、おそらく相手のお芝居も変わってくるのでは?
武子:変わります。だから新鮮ですね。「芝居って楽しいよね」って気持ちが通じ合ったというか。相手の芝居が変わった瞬間、相手も多分楽しんでくれてるんだろうなと思いますし、自分も変わった瞬間楽しいですし。演出家さんや相手の方と「あっちの方が良かったんじゃない?」とか話し合うこともできますし。ダメ出しすらも「芝居を考えられる機会が増えた」って思えるので、本当に楽しいです。
コロナ禍というマイナスの期間を、武子さんの意識の変化でプラスに変えられたんですね。
武子:どんなタイミングもプラスに変えられる瞬間の方が多いと思うんです。「ピンチはチャンス」という言葉の通りというか、自分が窮地に立った時や不安定な時って本当にチャンスに変えられる瞬間が多かったりするので。多分、チャンスって本当は常に自分の横にあって、いつそれを自分が拾い上げるかだけのものだと思うんですよ。変わるきっかけは多分、全部自分次第というか。
武子さんのお話に共感される方、勇気付けられる方も多いと思います。もう少し武子さんのお芝居の作り方についてお伺いしたいのですが、今作のようなゲーム原作の舞台に出られる機会も多いかと思います。ゲーム原作の舞台に出られる際、意識されていることはありますか?
武子:どの2.5次元舞台作品でも必ずっていうぐらい大事にしていることがありまして。とにかく毎回、莫大な資料請求をしています。相関図や呼称表、そういったものですね。
舞台ってやっぱり生ものなので、いつ何が起こるか本当に分からない状況が実はすぐそこにあって。お客様は気付いていないかもしれないですが、意外にアクシデントって起きることが多いんですよ。たとえ何かしらのアクシデントが起きても、自分がどれだけその世界観を理解しているかで、そこでもピンチをチャンスに変えることができるかもしれない。
例えば舞台上では絡まない、名前を一回も呼ばないキャラクターがいたとしても、実は原作の世界観の中ではすでに出会っているかもしれない。そういったことを理解していれば、万が一なんらかのアクシデントで絡まなくてはならなくなったとしても上手く対処することができる。そうすれば僕らは素に戻ることも無いし、お客様はめちゃくちゃ安心するし、しかもアドリブでフォローできたということでプラスにしかならないと思うんです。
だから僕は「〝備えあれば憂い無し〟なので、とにかく資料をください」とお願いしています。全部を把握することは不可能かもしれないですが、頂いた資料を読み込んで、舞台のストーリー上には表れない部分までキャラクターの関係性やシナリオをはめ込んでいきますね。
原作ファンの観客にも「このキャラクターはそんなことしない、言わない」と思わせないように。
武子:もちろんそういったアクシデントが起こらないようにするのが大前提ですけどね。でも作品によっては日替わりパートが入れられる場合もありますし、そういった場面で原作の世界観をあんまり理解してなかったら、結構危ないと思うんですよ。僕は自分自身が商材なので、お客様からの信頼はもちろん、僕を使ってくださる会社の方々からの信頼というものも忘れちゃいけないと思うんです。だからこそ、自分がやれる範囲のことは日々の生活の中でも欠かさずに取り組んでいます。
そういった意識はいつ頃から身についてきたのですか?
武子:すぐにはできなかったですね。やっぱりちょっと尖っていた時期、ガムシャラになっていた時期はどうしても、自分の感情を優先してしまうことも多かったです。「俺はこういう気持ちだから、こう動きたいんだ」と。もちろん原作の勉強はしていましたし、原作サイドの方に「それはちょっと違うと思います」って言われたらやめていましたが、でもやっぱり、「俺、役者だし、俺の芝居だから」みたいな謎のプライド、本当に要らないプライドが若い時にはありました。
それが無くなってからは、せっかく2次元の作品を3次元で観れるんだったらどこまでもその世界観を追求した方が楽しいし、自分の芝居とキャラクターをちゃんとミックスさせれば、それだって一つのメディアミックスだって思えるようになりました。2次元のキャラクターたちの思いとか、歩き方、姿勢、感情、そういったものを3次元に実現できるのは僕たちしかいないので。それこそが2.5次元役者の魅力だと思うんですよ。そういったことをすごく大切にするようになったのは、尖りが消えた時期からですね。
『ゆめくろ』のコラム的な質問もお伺いしたいと思います。『ゆめくろ』において「マイスター」=職人は「ある分野において熟練した技術を持ち、世界発展に貢献する者に贈られる称号」と位置付けられていますが、武子さんは役者以外では何の職人になりたいですか?
武子:料理人ですね。間違いなく料理人です。料理以外もはや無いです。
SNSでも美味しそうな料理写真をアップしていますよね。
武子:ただ、しつこいっちゃしつこいんですよね。ハマった料理を何回も作っちゃったりとか、綺麗にできるまで一生作り続けたりとかするので。今は自分で作った麻婆豆腐が美味しすぎて!(笑)
本当に美味しそうでした!
武子:麻婆豆腐の素とか使わないんですよ。カレーとかも最近はルーを使ってなくて、「全部自分でイチから作った方が美味いじゃん」みたいな。まあ「イチから」って言っても、さすがにスパイスまでは自分で作れないので(笑)、売ってるものと調味料を合わせて作ってますが。今回の麻婆豆腐は半端ないですね! ご飯、2合食べ切っちゃいました。美味しすぎておかわりが止まらないんですよ。麻婆豆腐に関してはラー油から自分で作ってるので。
ラー油を作ってるんですか!?
武子:そうです、青梗菜とか花椒とかいっぱい入れて。あとは今朝作った中華スープ、神がかりましたね(笑)。すっげえ美味くて、ちょっとびっくりしちゃうくらいで! 「この中華スープと麻婆豆腐を合わせたい」って思ったので、多分また今夜麻婆豆腐を作ります(笑)。
レシピは頭に入っているんですか?
武子:入ってます。いろんなレシピ動画とかも見て、「こういう風に作るとこうなるんだ」「このやり方ならこっちの方が良さそうだな」とアイデアの参考にしていますね。
先日は天ぷらも揚げてましたね。
武子:天ぷら好きなので。茄子天が好きでよく揚げています。あと鶏天。茄子、鶏、オクラが好きですね。天ぷらにはやっぱり天ぷら用の油を使った方が美味しいんですよ。油が違うと、味が全然変わります。
武子さんにとって、料理をする時間というのはリセットやリラックスの機会になっているのでしょうか?
武子:ただの習慣ですね。当たり前というか、何も考えてないですよ。あんまり家から出ないので、料理だけじゃなくて、洗濯も掃除もこまめにします。
多分、家でやることが無いんでしょうね(笑)。やること無くて料理しているっていうのと、本気で毎日自炊し続けてたら外食より圧倒的に安いし、量もたくさん食べられるからいいかなって。その分好きなものにお金使えるしなっていうぐらいの感じです。
料理も、コロナ禍にSNSに載せるものが一つも無い状態で「なら料理の写真を載せようか」って始めたんですよ。ファンの皆様、そして自分も得するものを載せたいということで、料理します、写真出しますって。それでみんなが「美味しそう」ってリアクションしてくれたら今度は料理の動画を出して。やっぱり僕の職業はエンタメなので、何もできない期間にもみんなに何か届けられるようにイチから考えたのが料理でしたね。
番組や配信など、お仕事で料理をされる機会も増えてきましたよね。
武子:そうですね。あとは本当にプライベートでお店を出せたらいいなって。もうそのくらいまでいってますね。人生一回しかないので、やれるんだったらやった方がいいし。僕、仕事を休んでる時間とか本当にもったいなくて、だったらアルバイトした方がいいなと思うくらいなんですよ。仕事大好きなので、とにかく仕事していたい。だからお店も出したいです。
本当にマイスターですね。最後に舞台『ゆめくろ』を楽しみにしている方々へ一言お願いします。
武子:舞台ならではの素敵な歌がありますし、西田さんの演出なので豪快な殺陣もつくと思います。黒妖精とコラボして技を出したり、ダンスもあったり、2.5次元舞台の魅力が全部ぎゅっと詰まっている作品になるんじゃないかな。登場人物も本当に愉快なキャラクターばかりですし、まだまだ今作の舞台には出ていない『ゆめくろ』のキャラクターもたくさんいるので、今作をまずとても面白いものにして、さらに次に繋がるようにしていきたいですね。今回もしかしたら皆さんの推しのキャラクターが出ていない可能性もあるので、そういった方々にも届けられるように繋げていきたい。精進してやっていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。そして、ぜひ劇場に観に来てください。
information
舞台『夢職人と忘れじの黒い妖精』
【日時】2024年8月2日(金)〜8月12日(月・休)
【会場】東京・シアターH
【原作】「夢職人と忘れじの黒い妖精」(株式会社ジークレスト)
【脚本・演出】西田大輔
【音楽】TAKA
【出演】
クロウ 役:武子直輝
イツキ 役:佐野真白
グランフレア 役:川上将大
ルージュ 役:古谷大和
ノア 役:新谷聖司
カイ 役:若林星弥
シオン 役:熊谷魁人
カミュ 役:小野健斗
セブン 役:吉原雅斗
ユミル 役:梶田拓希
ヴィクトル 役:田内季宇
レン 役:武本悠佑
ナナシ 役:橋本真一
ジョー 役:伊勢大貴
エース 役:内田将綺
マム 役:田中良子
テスタメント 役:矢田悠祐
アンサンブル:毛利光汰、千枝義人、粂川暁典、平井颯太
【チケット】
一般発売中
ローソンチケット
劇場にて当日券の販売もございます
詳細ページ
【配信】
8月11日(日)17:00公演(スイッチング映像)
DMM TV
詳細ページ
【Blu-ray】
発売日:2025年1月29日(水)
Blu-ray(特典CD付)3枚組:12,980円(税抜価格11,800円)
詳細ページ
www.marv.jp/special/stage_yumekuro
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テキスト・撮影:田代大樹
ヘアメイク:杉田智子
©GCREST, Inc. ©舞台ゆめくろ製作委員会