【菊池修司】インタビュー【舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-】

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2023年3月10日、舞台「ヴァニタスの手記カルテ」が待望の再演を迎える。
昨年1月に実施された初演は新型コロナウイルスの影響を受け、わずか1公演のみの上演となってしまった。
物語のもう一人の主人公である吸血鬼の青年・ノエを演じるのは菊池修司。
ついに再び、菊池がこの作品に向き合える日がやってくる!

きくち・しゅうじ
1995年11月10日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、舞台「HELI-X」シリーズ(アガタタカヨシ 役)、舞台「東京リベンジャーズ」シリーズ(半間修二 役)など。2023年3月24日より 舞台「炎炎ノ消防隊」-五つ目の柱-(ヴィクトル・リヒト 役)、5月4日より 舞台「ブルーロック」(御影玲王 役)への出演を控える。Twitter

interview

初演は公演中止や、急遽代役を立てての上演内容変更など、悔しい思いもたくさんあったと思います。改めて、今回の再演が決まった時の思いを教えていただけますか?

菊池:語るにも、本当にいろんな思いがあるんですけど……、でも何より一番嬉しいのは、こうやって再演ができることですよね。公演中止になった作品が再演できる確率って、かなり低いと思うんです。再演を望む声を上げてくださったお客さんにも、たくさん動いてくださった製作の方々にも、本当に皆さんに感謝しています。それが今、一番最初に出てくる言葉ですね。
それこそ1年前はたまらない気持ちになったけど、それもこれも全部この再演のためにあったんだろうなって今なら思えますし、僕が精神的に成長する機会にもなったと思っています。

今年1月、菊池さんの配信番組で、代役としてノエ役を務めた高本 学さんとお二人で「ヴァニステ」についてのお話をされていました。改めて、その放送でどんなお話をされたのか教えていただけますでしょうか。

菊池学が代役をやるということになった時、僕自身も彼以外には適任者がいないと思っていましたし、彼もすごく努力して公演のタスキを繋いでくれたんですよね。学が代役を演じることによって今回の再演に繋がったと思うし、僕が出られない分、「みんなとの架け橋になるぞ」という気持ちで挑んでくれたことが改めて分かって、すごく嬉しかったです。
そして何より、あのタイミングで代役を務めるって、想像を絶する大変さがあったと思うんです。代役が決まってから本番までの期間も短かったですし、物量も多い作品でしたし。それを引き受けられる器の大きさ、心の温かさを改めて感じることもできました。

ありがとうございます。そしてついに、菊池さんがノエ役を演じられるわけですけれども、改めてどんな人物だとご自身の中で捉えて稽古に励まれていますか?

菊池:ノエは素直で言葉に嘘が無いから、思ったことをすぐ言ってしまう人。素直さゆえに自分の思うがままに突き進んでしまう性格が玉にきずだったりするけれど、それを物語のもう一人の主人公であるヴァニタスと補い合って生きているキャラクターだと思っています。
ノエの無邪気に喜んだり嬉しがったりするところが自分自身とも似ていると感じていて、そういったところには親近感も湧いています。

脚本・演出の山崎 彬さんから「こういう風に演じてほしい」というオーダーは?

菊池:キャラクターのベースを形作る上ではお互いに摩擦が無く、「そうだよね。ノエはこうだよね」っていう共通認識の中でやっていけていると感じています。ただ、ヴァニタスとの掛け合いのシーンが多い分、いがみ合いをしている時とそうでない時……例えば大事な話をしている時の空気感には大きな差が生まれるはずだから、その空気感は大切に描いてほしい、ということは言っていただきました。

ヴァニタス役の植田圭輔さんとは、再演が決まる前後でお話はされたのですか?

菊池:初演が終わってから、舞台「東京リベンジャーズ ―血のハロウィン編―」で共演したのですが、そのタイミングで当時の思いについて一度話しました。
さらに今回の稽古で会ってから、台本や原作を読み返していく中で、「もっとこうしよう」とか「ああしよう」というのがお互いに出てきたんです。それはきっと、この1年間で他の現場で培った価値観や経験がそうさせてるんだろうなって感じましたね。
そういう意味で、再演は初演よりもとてもパワーアップしたものになるんじゃないかなと。僕は初演をお届けできていないのでそのパワーアップが伝わるかはさておき、僕らの中では「初演をなぞっていこう」というよりは、「さらに」という思いでやっていこうということを圭輔さんとも話しました。

悔しい思いも経たからこそ、お芝居に対しての思いが募る部分もあったのでは?

菊池:ありました。それにヴァニタスとノエの物語自体、右往左往するお話にもなっているので、そこがすごく自分ともリンクするんです。「ヴァニタスと出会い、多くを得、失い……」というセリフがあるんですけど、まさしくそうだなと思ったり。本当にいろんな感情を頂いた作品でもあるし、圭輔さんと共にいろんなものを得ていろんなものを失って、でも物語は進んでいかなきゃいけなくて。そんなリンクもあって、不思議な感覚があります。
稽古をしていても、ノエとして言っているつもりでも一言一言がすごく自分に刺さったりして。自分にとっていろんな意味で特別な作品だなと感じています。もちろん関わらせていただく全ての作品を大事にしているんですけど、やっぱりあの時に抱いたいろんな感情や自分の中で引っかかっている部分が少なからずあるから、より特別な作品に感じるのかもしれません。

リリースのコメントでは、「時が止まったまま」という言葉にその引っかかりみたいなものを感じました。

菊池:正直あの時は学が演じてくれたノエを見られなかったですし、SNSを見ることもできなかったんです。きっと舞台は繋がって、素敵な物語をお客様は受け取ることができたんだろうということに安堵を感じる反面、それを素直に受け入れることができない自分がいたことも確かで。
でもやっと今、初演の映像を観ることができたんです。そこですごく素敵な学のノエを観て、改めて感謝しました。学が繋いでくれたからこそこうやって僕が稽古できている、これから本番を迎えることができるんだっていうのを噛み締めて演じることができています。きっとあの1公演を観てくださった方々が「もっと観たい」という声を挙げていただいたのもあったと思いますし。もう一度まっすぐに作品に向き合えているのも、繋いでくれたキャストやスタッフの皆さんのおかげです。

この再演を終えたら、さらに前に進めそうな気がしますね。

菊池:そうですね。気持ちの面では本当に“時が止まってしまっている”状態なので。この1年を通してのお芝居の経験が今回の再演に反映されている部分は多分あるんでしょうけど、気持ちはあの瞬間で止まっているというのが正直なところですね。だからどこか自分の中では、前に進めていなかったのだと思います。
だからこそ今回の公演を通して、止まってしまった時を進めたいなと思っています。今回だってギリギリまで何があるか分からないので、しっかりとした緊張感の中で今も稽古に挑んでいますし、本当にその中で初日を迎えてお客様の拍手をもらった時、自分がどう感じることができるのか……それをゴールに頑張りたいです。ファンの方から頂いた思いもたくさんあるので、僕もその気持ちの一つ一つに応えられるように、期待を裏切らないように、責任を持ってノエを演じたいと思っています。

ノエを演じる中で、演じている本人だからこそ感じる魅力や「こういうところを見てほしい」というこだわりはありますか?

菊池:やっぱりノエって、ヴァニタスの中には存在しない言葉をくれることが多くて。ヴァニタスにかけるノエの言葉の一つ一つがとても深く心に刺さるんです。それらの言葉を、いつも以上に耳を澄まして聞いてくださると、僕が伝えたいことやこの1年の思いとかも一緒に伝わるんじゃないかと思っています。もちろん、この作品におけるノエという人物が伝えたい思いを感じ取っていただくのが大前提ではあるんですけど。僕が今まで感じていた思いも、ノエの言葉に乗せて伝わったら嬉しいです。
あと個人的には、「劇団番町ボーイズ☆」の同じメンバーである矢代卓也との共演。彼が演じるルイという役はノエと幼馴染の役で、作品を観ていただけたら分かるんですけど、すごく大事な役どころなんです。そういう関係性の役を劇団のメンバーと一緒にやれるということのありがたさと、信頼関係がある状態で稽古に臨める心強さを感じています。そのシーンもメンバーの卓也と一緒に大切に作り上げているシーンなので、ノエとルイのやり取りにも注目してほしいです。

植田さんや高本さんに加え、劇団の仲間も。とても心強いメンバーに囲まれていますね。

菊池:本当に心強いです。稽古をしながら、みんなの細かな気遣いや動き、セリフ回しなどを通してキャストの愛を感じたり、ノエに対しての思いを感じたりしているので、きっとそういう空気感というのもお客様に感じ取っていただけると思います。
また、初演時に実施したスペシャルカーテンコールの映像を観た時、みんなが笑顔で温かい空気が流れていて素敵だなって思ったんです。この輪に今度は僕も入れることのありがたさを噛み締めながら、劇場で皆さんと笑顔でお会いできるのを楽しみにしています。

information

舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-

【日程】2023年3月10日(金)~12日(日)
【会場】東京・サンシャイン劇場

【原作】望月 淳「ヴァニタスの手記」/「ヴァニタスの手記」製作委員会
【脚本・演出】山崎 彬

【出演】
ヴァニタス 役:植田圭輔
ノエ 役:菊池修司

ジャンヌ 役:七木奏音
ドミニク 役:澤田美紀
ルカ 役:前田武蔵
ルイ 役:矢代卓也
オルロック 役:中村哲人
Dr.モロー 役:鈴木理学

ルスヴン 役:鷲尾 昇
ローラン 役:丘山晴己


【チケット・配信】
イープラス

vanitas-stage.com
Twitter

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菊池修司 掲載
『Sparkle vol.52』2023年3月23日発売
MEDIABOY SHOP商品ページ(菊池修司×松島勇之介 クリアファイル付き限定特別セット)
Amazon商品ページ

内容:【菊池修司×松島勇之介】
本文8ページ(対談インタビュー+ソロコラム&撮り下ろしグラビア)
+巻末綴じ込み付録:菊池修司×松島勇之介ツヤツヤ厚紙2shotピンナップ

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テキスト:田中莉奈
写真:大槻志穂
スタイリング:MASAYA
ヘアメイク:望月 光

衣装協力=ガウン、シャツ:A PUZZLING HOME(0729-47-7665)
ジャケット、パンツ:SHUN IKEDA(080-8951-5947)
メガネ:BJ CLASSIC COLLECTION(Eye’s press 03-6884-0123)
その他スタイリスト私物

©望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会
©舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会

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