日本各地を走る鉄道路線を擬人化した鉄道トリビアコメディコミック『青春鉄道』を原作に、2015年に第一弾が上演されるやいなや大反響を巻き起こしたミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』(通称『鉄ミュ』)。
そのシリーズ最新作となるミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』5~鉄路にラブソングを~ が上演中だ(東京・〜2023年6月25日(日)、兵庫・6月30日(金)~7月2日(日))。
「Sparkle web」では、シリーズ第一弾から出演する東海道本線 役の鯨井康介、シリーズ第二弾から西武新宿線 役として出演し、本作では函館本線 役も兼ねる橋本汰斗、そして本作がシリーズ初登場となる北陸本線 役の牧田哲也にお話を伺った。ボリュームたっぷりの鼎談を2回に分けてお届けする。
後半ではお互いに感じる俳優としての魅力や、SNSに上げる自撮り写真に関する悩みなど、和気藹々とした3人のやり取りを勢いそのままに掲載。
そして本作が気になりつつも、あと一歩を踏み出せない『鉄ミュ』未乗車の方々に、3人から背中を押す温かい一言を頂いた。
全2回の2回目/前編はこちら
interview
前編では鯨井さんから「この3人は意外と居心地が良い」という発言もありましたが、現時点ではお互いをどのような役者だと捉えているのでしょうか? まず鯨井さんについて、橋本さん牧田さんからお願いできますか?
橋本:なんか……いいところがありすぎるんですよね……。
鯨井:あ! ずるいぞその逃げ方!
橋本:逃げてないです逃げてないです!! 具体的に言わせてもらいますよ!(笑) 僕、ユーモアが必要な場面というか……コメディーのシーンが苦手なんですよ。どう表現すればいいのか迷っちゃって。鯨井さんはそういう部分でもスパッとすぐに表現できるので、めちゃくちゃうらやましいなっていつも思っています。
牧田:ニュアンスで“俳優”、“役者”と分けるとすれば、鯨井さんは“役者”だなってイメージを持っていたんです。芝居が好きで、芝居に対して純粋な方なんだろうなって。実際にご一緒してみるとその印象に加えて、「おいおい、そんなこともしちゃうの!?」みたいなノリも兼ね備えている方だなと。例えばナイナイ(ナインティナイン)の岡村(隆史)さんがオファーシリーズでハッチャけちゃうみたいな感じ。ジュニア(東海道本線)の振付の稽古でも、もともとついている振りにむちゃくちゃ足していくんですよ。振付の方とも多分「そこらへんはジュニアっぽく遊んじゃっていいよ」みたいな意思疎通ができているんだと思います。地に足のついた役者でありながら、ちゃんとノリで応え切れる懐もある。
鯨井:へぇ〜そうなんだ〜。俺、役者なんだって♪
一同:(笑)。
橋本:そうですよ! “ザ・役者”ですよ!
鯨井:“ザ”じゃないよぉ〜!
牧田:演出なんかもしちゃってね。
鯨井:ねー!! やらしいですよねぇ〜(笑)。いや〜ありがたい、嬉しいですよ〜。……思ったより恥ずかしいので次の話いきましょう!
(笑)。では次は橋本さんについて、鯨井さん牧田さんからお願いします。
鯨井:汰斗は“ブレない”ところが好きです。役者としてもそうなんですけれども、人生レベルで“橋本汰斗”をエンジョイして生きているのが、僕はすごく魅力的だと思っていて。特に歌で表現する時にそういった魅力が出ていると思うんですが、自分が好きなもの、自分の表現というものをとても早くから見つけた人ですよね。
それに汰斗は「コメディーが苦手」って言うけれども、コメディーに対しての興味やキャッチする力っていうのはすごくある人で。だからこそ一緒にやっている時も、汰斗に投げちゃって大丈夫だと僕は思っていて。本当にコメディーができない人に投げちゃったら大変なことになっちゃうけれども、汰斗には投げて平気だという安心感があるんです。
牧田:僕は“アーティスト”というイメージが強いです。汰斗のダンスと歌がとても好きですし、かつて同じ事務所の先輩後輩の間柄で舞台をさせてもらっていた時も、歌やダンスに懸ける思いがすごく強かったのを覚えています。ただ汰斗はどう思っているのか分からないけど、芝居でもすごく純粋で綺麗な表現をするんですよ。テクニックもすごくあるんですけど、最終的にはマンパワーというか、ピュアな気持ちで演じていたイメージが強くて。なので役者としてももっと、ダンスや歌のようにガンガンいってもいいんじゃないかって思っています。
鯨井さんが言ったように、“ブレない”ところもすごいですよね。周りがどう言おうが、自分がやりたいということに対しては本当にブレない。表現者としてはすごく大切なものを持ってるなって思いますね。
鯨井:いいなぁ。すぐブレちゃうもん俺。
橋本:いやいやいや(笑)。
鯨井:ブレちゃうというか、不安になることが多いんです。「これでいいのかな?」って。汰斗は不安なんて何も無いっしょ?
橋本:いや俺めっちゃありますよ!!
鯨井:ほんと!?
牧田:不安を感じているがゆえに、もう振り切るしかないっていうところもあるのかも。
橋本:確かに! 不安はめちゃくちゃ感じちゃうんですよ。めっちゃ感じちゃうんだけど、全部無視します! 無視してやっちゃえば、「ああ、これで良かったのかな」って。ちょっと勇気を出して“ぶっちぎる”っていう過程が一回あるんですよ。
鯨井:でもやっぱり、その“ぶっちぎる”勇気は持っているんだ。いきなり海外にバーンと行っちゃうみたいな、そういう“ぶっちぎる”パワーが芝居の中でもあるんだね。
橋本:ありますあります! 例えば舞台上でハプニングが起こったりした時、周りに誰がいるかにもよるんですけど、基本的にはすぐに反応しちゃうタイプというか。
鯨井:いけちゃうんだ。素晴らしい。僕らからしたら頼もしいですね。やっぱり本人が持っているパワーとかマインドって、芝居にすごく出るんだなって改めて思います。
ではラスト、牧田さんに関してはいかがですか?
鯨井:僕は牧田さんと共演するのが初めてで、ご一緒してまだ一週間ぐらいなのでもしかしたら“明後日なこと”を言っちゃうかもしれないんですけど、最初の印象は“ニュートラル”を作るのがとても上手い人だなと。僕、芝居ってまずニュートラルというか“ゼロ地点”を作って、そこで平板な自分をどれだけ保てるかが大事だと思っているんです。芝居の作り方は人によって違うと思うんですけど、僕はそこを作ってからスタートするのが正しい方法論だと思っていて。牧田さんはその部分をフラットに持っていくことがとても上手い人だなって思っています。
牧田:ありがとうございます。俺自身、本当にそうありたいと思っていて。焦って訳の分からないところにいっちゃうと結果すごく遠回りになってしまうんですよね。でも今回は北陸本線という役に助けられているところもあるかも。北陸本線は一歩引いていてもいいようなところがあるから、そういう面ではフラットになりやすいというか。
でも普段からそういった作り方は意識しているんですね。
牧田:原作のある舞台だと特にそうなんですけど、キャラクターに意識がいきすぎちゃうと根本を見失っちゃうんです。訳分かんないことばっかりやって、中身全く無いみたいな。そうすると本当に暴走するしかなくなっちゃうので。そうならないようにまずはフラットなところを作って、そこから色付けしていこうという。そこは本当に気を付けなきゃという感じで――。
鯨井:ねぇ、今俺らが褒めるターンだから!
牧田:あっ!
一同:(爆笑)。
鯨井:黙ってちゃんと聞いてよ! 俺らがちょっと言ったら全部自分で説明しだしてさ!
牧田:ごめんごめん!
鯨井:今、牧田さんは黙って聞いて照れるターンだから!
牧田:そうだった(笑)。
橋本さんからはいかがですか?
橋本:ちょっと言語化するのが難しいかもしれないんですけど……1個だけ、絶対に牧田くんしか持っていないものがあって。初めて入った現場でも、そこにずっといたかのように存在できる人というイメージがあるんです。特に人をイジるでもなく、イジられるでもなく、フラットにそこにいるだけでなぜかみんな寄っていきたくなるような人柄というか。それは本当に、牧田くん以外には無い才能だと思うんです。
鯨井:分かる。あのさ、初日にスンって座っていられるってすごいよね。
橋本:すごいですよね!
牧田:そうなのかな?
鯨井:いや、多分汰斗の言ってることと同じなんですけど、物理的な意味じゃないんだよ。初日ってやっぱりどこかソワソワしちゃったりするものだと思うんですけど、そこにスンって存在していられる力というか。それはすごく感じます。
橋本:昔、一緒にD-BOYSというものをやっている時からそうだったんです。ちょっとピリっとしているような場所でも、牧田くんはスッといて、なぜかいるだけでちょっと空気が和むんですよ。そんな才能を持っている人だなと思っています。
鯨井:経験ももちろんあるから当然だと思いますけど、やっぱり板の上に立っていてもどっしりしてますよね。
橋本:してますよね。
牧田:いやいやいや、みんなも――。
鯨井:あ、まだ俺らのターンだから。
牧田:えぇー!?
一同:(爆笑)。
鯨井:まあ、もう終わったので、喋ってもいいですよ?(笑)
牧田:(笑)。いや、みんなもさっき言ってたけどさ、例えば汰斗の“ブレない”ところというのは自分の中での緊張感や不安感を振り切るため、みたいな。俺も一緒で、実は内心むちゃくちゃ「大丈夫かな……?」みたいなことを思ってるんですよ。
橋本:へぇ〜!
鯨井:そうなんだ! 緊張するんですね。
牧田:めちゃくちゃする。それにすごく気も遣っちゃうし。でも今回は知り合いも多いのでめっちゃ楽で。だから余計にどっしり座っているように見えるのかもしれないですね。
鯨井:そうなんですかね? でも、どんな場所でも地に足をつけてスッといられる人なんだろうなという雰囲気は感じます。
橋本:気を遣わないでいられるタイプの先輩って感じもしますよね。
鯨井:俺はどっちかって言うと気遣わせるタイプの先輩じゃない?
橋本:いやいやいや!? それはないです!
鯨井:ほんと!? 大丈夫!?
牧田:むしろ鯨ちゃんが気を遣う方じゃない?
鯨井:いや、というのも『鉄ミュ』ももう本編は5本目なんですよ。シリーズトータルで言うともう7本目で……いっつもみんな「俺と写真を撮ってください」って言ってくれないんです。
橋本・牧田:あっははははは!!
鯨井:後輩から「鯨井さん写真撮りましょう!」って言ってほしい! キメちゃん(KIMERU)とかはよく誘われてるんです。(永山)たかしくんも……あ、たかしくんは少ないか。
橋本・牧田:あははははは!
鯨井:でも俺よりは多い。俺めっちゃ少ないのよ!
牧田:鯨井さん、自撮りを上げるタイプじゃないと思われてるのかも。「誘ったら嫌がられるかも?」ってのがあるんじゃない? 俺も言われないですもん。
鯨井:あ、牧田さんも言われないんですか? いや、俺は言ってほしいんだけどなぁ〜。ちなみに一番SNSに写真を上げてるのは渡辺コウジっすね。すぐ「撮ろう撮ろう」って言ってるのよ(笑)。
鯨井さんもぜひ今回は後輩の皆さんといっぱい撮っていただいて。
牧田:いっぱい撮りましょうよ。
鯨井:自分から誘えばいいんですよね!
橋本:そうですそうです!
鯨井:でも恥ずかしいのよ!!(笑)
一同:(爆笑)。
公演期間中の皆様のSNSも楽しみにしております(笑)。ということで、いよいよ6月15日から公演が始まりますが、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』は長期シリーズということで、中には「本作から観てもついていけるのか不安」という方もいるかもしれません。そんな方々にも安心してご乗車いただけるよう、アドバイスを頂けますでしょうか?
牧田:僕も今作からの参加なので、そういう面では初めての皆さんと同じ目線だと思うんです。「『鉄ミュ』って結局どんな空気感なんだろう?」と思っているかもしれないですが、気負うことは全く無いです。敷居なんて1ミリも無いぐらいなので。
鯨井:バリアフリーね。
牧田:そう! バリアフリー極まりない舞台なので、路線のこととか詳しくない人でも何も考えずに来て楽しんで、そこから何か気になった路線を深掘りするみたいな流れでも面白いんじゃないかな。僕自身も今、稽古しながら原作を読み返したら「え!? この路線たちの関係ってつまりそういうことなんだ!」みたいな発見があって、目から鱗の毎日です。そういう感覚で気負わず楽しんで観てもらえればいいなと思います。
橋本:鉄道を知らない人からしたら、たまに訳の分からない用語が出てきたりとか、「なんでこの路線はこういうことを言ってんのやろ?」というシーンが出てきたりもすると思うんですが、本当に鉄道用語を1ミリも分からない状態で観ても楽しめます。それにもし今までの『鉄ミュ』を全く観たことが無かったとしても、『鉄ミュ』という作品自体が短編のオムニバスという感じなので、どこから観ても楽しめる作品になっています。用語が分からなくても絶対に楽しく観られる作品だと思うんですが、牧田さんが言ってくれたように、観てもらった後に気になる言葉やシーンなどを調べてみたら「あ、こういうことを言っていたんや」みたいな発見があったり。ダブルで楽しめる作品なのかなって思います。
鯨井:この作品はオムニバスなので物語として明確なスタートがあるわけではないので、今から観ていただいても全く問題は無いです。ただ一つだけ懸念があるとすれば、今回から声出しが再びOKになったことで、今までのシリーズを観てきた“『鉄ミュ』の民”たちの一体感がすごすぎて、新人が引いてしまうんじゃないかという(笑)。
橋本:ふふふっ!
牧田:あぁ〜なるほど!
鯨井:以前、応援上映も観させていただいたんですけれども、すごく素敵に盛り上がってくれていて。もしかしたら「えっ、この人たちのこの空気に入っていいんだろうか?」って思ってしまうんじゃないかってぐらい、『鉄ミュ』の民、熱いです。でも、そこは一歩、勇気を出して参加していただければ。逆に我々も声出しリスタートのタイミングですから。『鉄ミュ』の民たちも、もしかしたら声出しの感覚を忘れているかもしれないし、彼らもきっとリスタートなので、逆に初めて『鉄ミュ』に乗るなら今なんじゃないかな。
そして何より、『鉄ミュ』の題材は皆さんの町にも走っている路線たちですから。さらに今回はシリーズ最多の路線が登場するので、きっとあなたが身近に感じる路線も出ているはず。とても観やすい入口になってくれると思います。なので、ぜひ臆することなく参加してください。今までの『鉄ミュ』の民たちも新人を優しく迎え入れてくれたら。みんなで作ろう鉄道の輪! よろしくお願いします!
橋本・牧田:おぉー!!(拍手)
素晴らしい締めのお言葉、ありがとうございます!
information
ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』5~鉄路にラブソングを~
【日程】2023年6月15日(木)~6月25日(日)
【会場】東京・天王洲 銀河劇場
【日程】6月30日(金)~7月2日(日)
【会場】兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobe
【原作】『青春鉄道』青春(KADOKAWA/コミックウォーカー、COMIC BRIDGE連載中)
【脚本・演出・作詞】川尻恵太(SUGARBOY)
【音楽】あらいふとし+ミヤジマジュン
【振付】EBATO
【出演】
東海道新幹線 役:永山たかし
常磐線・西武池袋線 役:KIMERU
東海道本線 役:鯨井康介
京浜東北線 役:高橋優太
東武東上線・信越本線 役:高崎翔太
宇都宮線(東北本線) 役:稲垣成弥
北陸新幹線・西武安比奈線 役:渡辺コウジ
函館本線・西武新宿線 役:橋本汰斗
東北新幹線 役:石渡真修
秋田新幹線・千代田線 役:神里優希
上越新幹線 役:田中涼星
九州新幹線・西武西武園線 役:馬場良馬
山陽新幹線 役:八神 蓮
西九州新幹線 役:石田 隼
羽越本線・西武国分寺線 役:加藤良輔
上越線 役:鎌苅健太
北陸本線 役:牧田哲也
東金線 役:滝川広大
総武線(総武本線) 役:伊崎龍次郎
中央線(中央本線) 役:皆木一舞
アンサンブル:益川和久、小山麗也、西本健太郎
【チケット】
公式サイト
【配信】
ニコニコ生放送
www.marv.jp/special/aoharutetsudou
Twitter
gallery
present
鯨井康介さん・橋本汰斗さん・牧田哲也さんのサイン入りチェキを3名様にプレゼント
応募方法:
①Sparkle公式Twitterをフォロー
②対象ツイートをリツイート
※応募締切:2023年7月2日(日)23:59まで
※当選された方にのみ、Twitterのダイレクトメッセージ(DM)にて、Sparkle公式アカウント(@Sparkle_stage)よりご連絡いたします。当選者の発表はDMをもって代えさせていただきます。
※プレゼント発送に必要な情報はDM上のみでお伺いします。応募フォームへの誘導と称してURLをクリックさせるようなことはございません。
※頂いた個人情報は、プレゼント発送以外の目的では使用いたしません。
credit
テキスト・写真:田代大樹
スタイリング:MASAYA
ヘアメイク:依田陽子
©青春 ©ミュージカル『青春鉄道』製作委員会